セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F2-06:

腹部造影超音波が診断に有用であった肝血管肉腫の一例

演者 藪下 知宏(京都大学 消化器内科)
共同演者 丸澤 宏之(京都大学 消化器内科), 神田 啓太郎(京都大学 消化器内科), 上田 樹(京都大学 消化器内科), 妹尾 浩(京都大学 消化器内科), 千葉 勉(京都大学 消化器内科)
抄録 [症例]67歳男性。膀胱癌術後、慢性腎不全のため定期的に腹膜透析を施行されていた。平成24年8月、膀胱癌フォローのために撮影した単純CT検査にて、肝S4領域に径3cm程度の境界不明瞭な低吸収性の肝腫瘤を指摘された。その後、厳重に経過観察されていたが、腫瘤の増大傾向を認めたため、平成25年8月20日に肝生検目的で入院となった。入院後に実施した腹部造影超音波では、造影後の早期血管相で内部に結節状の血管構造を含む境界不明瞭な腫瘤を肝前区域に認め、kupffer相では腹部CTや超音波Bモード画像では同定困難であった多数の欠損領域を肝両葉に認め、腫瘤が肝全体に多発しているものと認識された。経皮的肝腫瘍生検の結果、病理組織では不整形の空隙を伴う異型紡錘形細胞の増殖が見られ、HepPar-1が陰性、CD31・CD34が陽性であることから肝血管肉腫と診断された。また、PET/CTを撮影したところ、肝臓以外に明らかな異常集積を認めず、肝原発の肝血管肉腫であると推定された。
[考察]肝血管肉腫は肝原発悪性腫瘍の中でもきわめて稀な疾患であり、特徴的な症状や検査所見に乏しい。経皮的な肝生検はDICや出血などのリスクが高く、十分な組織片を採取できないこともあり、診断に苦慮する例が少なくない。医学中央誌の検索では、2000年から2013年までで肝血管肉腫の報告は36例あり、そのうち経皮的肝生検や腹腔鏡下生検により確定診断されたのは9例のみであり、自験例は稀な症例であると考えられる。本症例では、肝腫瘍の描出に腹部造影超音波がきわめて有用であり、通常の画像検索で描出困難であった大小の肝内多発腫瘍を明瞭に描出することが可能であった。同時に、本例のような腎機能障害を伴った症例では造影CT検査の実施が難しいことが多いが、造影超音波検査は腎機能への影響が少なく有用性が非常に高いと考えられた。
[結論] 肝原発の肝血管肉腫は稀な疾患であるが、その画像診断には腹部造影超音波が有効であることが示唆された。
索引用語 肝血管肉腫, 造影超音波