共同演者 |
中井 隆志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 若原 佑平(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平松 慎介(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 末包 剛久(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 山崎 智明(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐野 弘治(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐々木 英二(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 木岡 清英(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 根引 浩子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐藤 博之(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 井上 健(大阪市立総合医療センター 病理部) |
抄録 |
症例は69歳男性,糖尿病の血糖コントロール目的で入院中であった.平成24年1月吐血し消化器内科紹介となった.上部消化管内視鏡検査にて幽門前庭部を中心にほぼ全周性に4型進行胃癌を認め,病理組織にてTubular adenocarcinoma, poorly differentiated type,Group5であった.平成24年2月幽門側胃切除術を施行し,術後診断はpT4(SE), ly3, v3, pPM1,pDM1であった.術前はAST/ALT 51/57IU/l T-Bil 0.2mg/dl程度であったが,術後より徐々に肝胆道系酵素上昇及び,黄疸を認めた.CT所見上肝内に明らかな占拠性病変なく,胆嚢壁は軽度肥厚していたが肝内胆管~総胆管に異常は認めなかった.薬剤性肝障害を疑い薬剤中止するも改善せず,採血上自己免疫疾患やウイルス感染は否定的であった.その後も改善を認めず肝不全,腎不全で平成24年4月死亡となった.病理解剖では,吻合部には肉眼的な結節を認めなかったが残胃組織,吻合した空腸では脈管侵襲を主体としたsignet ring cell carcinomaの浸潤を認めた.肝臓は緑色調であり肉眼的に結節性病変を認めなかった.組織所見では,門脈から類洞におよぶ腫瘍細胞の浸潤を認め,Hall法で小葉中心性に毛細胆管内胆汁うっ滞,肝細胞とクッパー細胞に胆汁色素の沈着が認められ,類洞内での微小循環障害が肝不全の原因と考えられた.その他膵,骨髄にも腫瘍細胞の浸潤を認めた.胃癌の肝転移症例において腫瘤を形成せず,類洞内播種する症例は珍しく,若干の文献的考察を加えて報告する. |