セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y6-09:

下血や狭窄症状を呈し、外科的切除術を要したS状結腸憩室炎の1例

演者 卜部 彩子(市立池田病院 消化器内科)
共同演者 中原 征則(市立池田病院 消化器内科), 安岡 秀高(市立池田病院 消化器内科), 谷 瑞季(市立池田病院 消化器内科), 八木 麻衣(市立池田病院 消化器内科), 倉橋 知英(市立池田病院 消化器内科), 大西 孝典(市立池田病院 消化器内科), 松本 康史(市立池田病院 消化器内科), 厨子 慎一郎(市立池田病院 消化器内科), 福崎 孝幸(市立池田病院 消化器外科), 大橋 寛嗣(市立池田病院 病理診断科), 今井 康晴(市立池田病院 消化器内科)
抄録 【症例】83歳、女性【現病歴】2日前からの黒色下痢便を主訴に2012年8月3日当科受診。貧血は認めず(Hb:14.5g/dl)、緊急上部消化管内視鏡を施行したが活動性出血は認めなかった。しかしその後も黒色便が続くため8月6日当科再診。貧血の進行(Hb:8.6g/dl)を認め、再度上部消化管内視鏡を施行したが活動性出血は認められず、精査加療目的に入院となった。【経過】入院後より絶食管理開始。下部消化管出血を疑い、大腸内視鏡検査を施行。S状結腸に粘膜の浮腫性肥厚および締め付け様の狭窄を認め、同部より口側に内視鏡は通過不可能であった。狭窄部肛門側入口の粘膜より生検を施行したが異型腺管は認められなかった。CTではS状結腸に全周性の壁肥厚があり、狭窄部の口側の腸管の軽度拡張を認めた。画像所見からは結腸憩室炎によるS状結腸狭窄や狭窄型虚血性腸炎が疑われた。入院時より腸閉塞症状は認められず通過障害は起こっていないと判断、経口摂取を再開、その後も腸閉塞症状は認められなかったが、下血を繰り返し、貧血の進行も認められた。内科的治療では出血のコントロールや狭窄の解除が限界であると判断、消化器外科転科の上、S状結腸切除術を施行された。切除標本の肉眼所見では約6cmの粘膜浮腫を伴う狭窄が見られ、憩室が多発していた。病理組織学所見では漿膜下層に達する憩室、憩室周囲の炎症細胞の浸潤を認めた。また漿膜下層脂肪織に線維化の広がりが認められた。悪性所見は認められず、以上より結腸憩室炎によるS状結腸狭窄と診断した。術後は順調に経過し、第15病日に退院となった。【考察】大腸憩室症の合併症は多彩であり、内科的治療を要することは多いが、手術の適応となることは比較的まれである。今回我々は、S状結腸憩室炎により下血や狭窄をきたし、手術を要した1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 大腸憩室炎, 狭窄