セッション情報 パネルディスカション「炎症性腸疾患の内科・外科境界領域」

タイトル P-07:

当院における重症・再燃潰瘍性大腸炎の内科治療の限界と外科治療へのタイミング

演者 大宮 美香(関西医科大学香里病院)
共同演者 岡崎 和一(関西医科大学内科学第三講座)
抄録 【はじめに】ステロイド(PSL)、免疫調節薬、生物学的製剤、血球成分除去療法(CAP)など潰瘍性大腸炎の内科的治療ストラテジーは豊富になったが、同時に外科的治療に踏み切るタイミングを誤らないように留意することも重要である。今回、当院開院後3年間の重症・再燃潰瘍性大腸炎入院患者の治療とその後の経過について検討を行った。【対象と方法】対象は2010年7月~2013年6月に入院した重症・再燃潰瘍性大腸炎患者(32回の入院)で、入院時の治療とその後の経過を診療録より調査した。【結果】入院時の治療は、PSL投与9例、PSL+CAP8例、タクロリムス(Tac)投与5例、CAP3例、その他7例であった。PSL使用例で寛解導入できたのは、PSL単独投与で3例、PSL+CAPで5例であった。また経過中外科的治療になったのは5例(15.6%)であった。(手術例1)PSL+CAPで改善なく、PSLパルス療法施行。その後サイトメガロウイルス感染、深部静脈血栓症を併発し、治療後に手術。(手術例2)PSL投与で改善したが、漸減中止後2ヶ月で再燃し、Tacに変更したが寛解に至らず手術。(手術例3)PSL投与し、漸減中に症状悪化を認めたためTacに変更。3か月後寛解に至らなかったため抗TNF-α製剤に変更したが、6か月後に症状悪化したため手術。(手術例4)PSL+CAPで改善したが、PSL漸減中止直後に再燃したためTac開始。その後も改善なく、腎機能障害のためTac減量で悪化を認めたため手術。(手術例5)PSL+CAPを開始したが効果不十分と判断しTacに変更。投与10日目より腎機能障害、血小板低下をみとめTac不耐と判断し中止。4日後に大量の下血を認め緊急手術。【考察】最近はPSL治療が敬遠されがちであるが、症例を選んで適切に使用すれば、有効な治療であると思われた。PSL抵抗性・依存性のためTacに変更となった症例では約半数がその後外科的治療を要しており、Tacに変更した時点で外科的治療の適応について考慮すべきと思われる。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 治療