セッション情報 シンポジウム「メタボリックシンドロームと肝胆膵疾患」

タイトル S-09:

非アルコール性脂肪肝炎進展における内因性エンドトキシンの役割

演者 堂原 彰敏(奈良県立医科大学 第3内科 (消化器・内分泌代謝内科))
共同演者 守屋 圭(奈良県立医科大学 第3内科 (消化器・内分泌代謝内科)), 吉治 仁志(奈良県立医科大学 第3内科 (消化器・内分泌代謝内科)), 福井 博(奈良県立医科大学 第3内科 (消化器・内分泌代謝内科))
抄録 【目的】メタボリックシンドロームの増加と共に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者が著増している。NASHは肝硬変、肝癌へと進展し得ることが知られているが、その機序は未だ明らかではない。近年の研究より、慢性肝疾患の病態進展において内因性エンドトキシン(Et)が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。今回我々はEtをめぐる腸管相関に注目し、コリン欠乏アミノ酸(CDAA)食投与ラットNASHモデルを用いて、難吸収性抗菌薬投与により内因性Etを減少させることによる肝線維化抑制効果について検討した。【方法】雄性F344ラットにCDAA食を投与して実験的NASH肝線維化モデルを作製した。難吸収性抗菌薬であるPolymixin BおよびNeomycinを飲料水に溶解し投与して、肝線維化進展、活性化肝星細胞、Total collagen量、およびTGF-β発現について検討した。さらに、Etの受容体であるTLR4の肝と小腸におけるmRNA発現、血中Etを反映するとされるLPS-binding protein (LBP) mRNA発現について検討した。腸管透過性については、FITC-dextranを経口投与し、門脈血中の蛍光強度を測定することにより解析した。【成績】CDAA+抗菌薬群ではCDAA群に比し、肝線維化と活性化肝星細胞の増加は有意に抑制されると共に、collagen、TGF-β発現は線維化の程度と平行するように低下していた。TLR4の肝における発現はCDAA群で線維化進展に伴い有意に増加し、抗菌薬投与により抑制されたが、小腸での発現は有意な変化はなかった。一方、CDAA群のLBP発現および腸管透過性の亢進は抗菌薬投与により線維化の抑制に平行して有意に抑制された。【結論】ラットNASH肝線維化モデルにおいてEtが重要な役割を果たしていることが明らかとなった。難吸収性抗菌薬によるEtの制御はNASH肝線維化進展予防への新しいアプローチとなり得ると考える。
索引用語 NASH, エンドトキシン