セッション情報 パネルディスカション「炎症性腸疾患の内科・外科境界領域」

タイトル P-11:

クローン病肛門管腫瘍に対するサーベイランスと治療方針の検討

演者 十河 光栄(大阪市立大学大学院 消化器内科学)
共同演者 渡辺 憲治(大阪市立大学大学院 消化器内科学), 前田 清(大阪市立大学大学院 腫瘍外科学)
抄録 【目的】本邦の長期経過例増加とともにクローン病(CD)関連腫瘍の増加が危惧される。本邦のCD関連腫瘍は肛門管病変が大半を占めることが知られているが、その病理学的特徴や早期発見を目指したサーベイランス法は未確立で、治療成績も概ね不良である。【方法】当院のCD肛門管腫瘍症例の臨床的、病理学的データを解析し、内視鏡的サーベイランスに基づいた治療成績について検討した。【成績】2006年9月~2013年10月までにCD関連肛門管腫瘍を8例経験した。年齢は47.5歳(32-73)でCD非関連の直腸癌好発年齢に比べ若かった。男性3例、女性5例で、CD罹患年数は28(14-39)年と長期経過例が多かった。肛門病変の経過としては、4例が経過を通して排膿が持続しており、うち3例は腫瘍発見時に肛門痛増強を認めた。診断に至った検査法は内視鏡下狙撃生検が7例、1例は肛門部皮膚生検であった。腫瘍発見時とその前の内視鏡検査の間隔は124(96-765)日であった。3例でCA19-9、CEA、抗p53抗体の上昇を認めた。1例経肛門的楔状切除が試みられたが施行困難で、最終的に全例直腸切断術が施行された。病理診断は高分化型腺癌4例、中分化型腺癌1例、粘液癌2例、乳頭状腺癌1例であった。病理学的に瘻孔内部の腫瘍細胞を確認できたり(4例)、周辺dysplasiaを認めた(1例)例が存在した。病期はstage0が1例、stage1が2例、stage2が3例、stage3aが2例であった。術後補助化学療法を施行したのは1例のみであり、再発症例は2例、術後無再発の観察期間は38 (1-86)ヶ月で、全員生存している。しかし年2回のサーベイランス内視鏡で積極的に生検しても早期発見困難な症例も1例存在し、なお課題を残した。【結論】活動性肛門病変を有するCD長期経過例に対しては、肛門狭窄に対処しつつ定期的な内視鏡検査を施行し、積極的な狙撃生検で粘膜面に表出した腫瘍の発見に努めることが肝要で、直腸切断術により救命できる可能性が高くなる。
索引用語 クローン病, 肛門管腫瘍