セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F2-08:

肝胆道系酵素上昇、発熱、高度炎症所見にて入院し、Stauffer症候群と判明した一例

演者 高井 利恵子(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
共同演者 宮島 真治(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大村 亜紀奈(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 吉川 貴章(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 美馬 淳志(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡部 誠(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 森澤 利之(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 塩 せいじ(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 木田 肇(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡野 明浩(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 沖永 聡(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 久須美 房子(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大花 正也(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
抄録 【症例】63歳男性【主訴】全身倦怠感、食欲不振【既往歴】40歳代で高血圧、61歳で腹腔鏡下右腎摘除術施行(淡明細胞癌、pT1,cN0M0) 【現病歴】入院約1ヶ月前からの全身倦怠感、食欲不振および2ヶ月間で10kgの体重減少を主訴に受診した。肝胆道系酵素の上昇を認め、炎症所見もCRP が24.5mg/dlと上昇していたため、精査目的に入院となった。【入院後経過】38℃に達する間欠熱を認めた。肝胆道系の器質的疾患をまず考えたが、エコーやCTでは肝胆道系に異常は認めなかった。肝胆道系以外の感染症、自己免疫性疾患や悪性腫瘍を鑑別に挙げ各種検査を施行した。FDG-PET検査で脊椎、胸郭、骨盤などにびまん性に高度集積を認め、MRIやCTで同部位の溶骨性変化を認めた。各種画像診断上、骨以外に異常所見は認めなかった。骨髄穿刺を施行したところ、血液疾患の所見は無かった。そこで固形癌の骨転移を考え、骨生検を施行した。病理組織像は以前摘出した腎細胞癌の組織形態と類似していた。また各種検査で他臓器に原発巣が指摘出来ないこともふまえ、腎細胞癌の骨転移と診断した。肝胆道系酵素の上昇については、MRCPや肝生検にて異常所見は認めず、Stauffer症候群と考えられた。泌尿器科に転科し分子標的薬を導入した。【考察】Stauffer症候群は腎細胞癌の腫瘍随伴症候群で、肝転移など明らかな肝障害の原因を認めない肝機能異常のうち黄疸を来さないものである。肝胆道系酵素上昇の原因として、通常肝胆道系の器質的疾患が鑑別の上位に挙がるが、本症例は腎細胞癌骨転移に伴うStauffer症候群と診断した。本症例は、腎細胞癌の既往があったがpT1で全摘出している場合の再発はまれであること、再発する場合でも骨転移よりも先に骨以外の臓器転移が確認される場合が多いこと、入院2ヶ月前に施行したCTでは異常を認めていないこと、以上から今回の診断に難渋した。【結語】Stauffer症候群を伴った腎細胞癌骨転移の一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 Stauffer症候群, 肝胆道系酵素上昇