セッション情報 パネルディスカション「炎症性腸疾患の内科・外科境界領域」

タイトル P-10:

クローン病外科手術後に抗TNFα抗体の投与は必須なのか?

演者 津田 早耶(和歌山県立医科大学第二内科)
共同演者 加藤 順(和歌山県立医科大学第二内科), 一ノ瀬 雅夫(和歌山県立医科大学第二内科)
抄録 【背景】クローン病(CD)において瘻孔・狭窄・膿瘍などの腸管合併症を併発している場合,外科手術が行われる.外科手術後の内科的治療では,抗TNFα抗体が導入されることが多いが,手術後の状態は基本的に重篤な病変が切除された状態であり,そのような症例に本当に抗TNFα抗体の使用が適切なのかについては,抗TNFα抗体製剤があまりに高価であることを考えると疑問の余地がある.そのため,当院では,全例に術後抗TNFα抗体を投与することはせず,定期的に経過観察をしながら,必要であれば投与する,という方針を取っている.【目的と方法】当院で腸管の外科的切除が行われた症例のその後の内科的治療法とその予後についてretrospectiveに解析し,CDにおける腸管切除術後の抗TNFα抗体投与の必要性について検討する.【結果】2010年11月から2013年10月までに当院で腸管病変に対し外科治療の適応と判断し,手術施行されたCD患者は16例(男性13例,女性3例,平均年齢32.8歳(18-45歳),平均罹患期間8.9年,大腸型1例,小腸型4例,大腸小腸型11例,肛門病変有3例)であった. 主な手術内容は回腸部分切除3例,回盲部切除7例,回腸結腸切除3例等であった.17例中,術後治療として,術後すぐ抗TNFα抗体使用8例,不使用例8例.不使用例の治療内訳は免疫調節薬5例,5ASAのみ3例.抗TNFα抗体使用例のうち,手術前から使用していたものは5例(62.5%)であった.術後すぐ抗TNFα抗体不使用例のうち,2例がその後の経過で抗TNFα抗体の使用を開始した.一方,その他の6例は抗TNFα抗体を使用せずとも経過観察可能であった.16例の平均観察期間は18.9ヶ月(2-36ヶ月)であるが,その間,再手術となった症例はなかった.【結論】腸管切除後のCD患者では,全例に抗TNFα抗体が必要というわけではない.コストパフォーマンスや患者QOLを考慮に入れ,症例の重症度や術後の慎重な経過観察などで症例ごとに適応を決定すべきである.
索引用語 クローン病, 抗TNFα抗体