セッション情報 ワークショップ2「併存疾患と進行度に応じた消化器癌の治療戦略」

タイトル W2-10:

消化器がん化学療法における部分的脾動脈塞栓術の有用性

演者 藤田 幹夫(神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科)
共同演者 小川 智(神戸市立医療センター中央市民病院 消化器内科), 佐竹 悠良(神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科), 辻 晃仁(神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科)
抄録 【背景・目的】消化器癌の化学療法対象症例は年々増加してきている。なかでも、高齢化等に伴う、臓器機能低下症例などはその対応に難渋する場合も多い。肝硬変に代表される脾機能亢進症例にがん化学療法を要する場合、さらなる血小板数減少の懸念から、積極的な治療に踏み切れない場合が少なくない。血小板数増加には脾臓摘出術を行う場合もあるが、切除不能癌症例には侵襲が大きく現実的とは言えない。しかし、部分的脾動脈塞栓術(PSE)を行い血小板数が増加すれば、癌化学療法を導入できる可能性がでてくる。今回、我々は、肝硬変に伴う血小板低下症例にPSEを施行し血小板数を増加させ、化学療法導入を試みたので報告する。【対象】2008年1月から2013年10月までにPSEを施行した肝硬変・脾機能亢進症による血小板減少により化学療法導入が困難であった4症例についての検討を行った。【成績】男性2症例、女性2症例(51-76歳:中央値65歳)、C型肝硬変・肝細胞癌3症例には肝動注療法目的で、アルコール性肝硬変を基礎疾患に有するS状結腸癌多発肝・肺・リンパ節転移1症例には全身化学療法目的でPSEを行った。PSEは塞栓率70%(60-90%)で施行し、血小板数は施行前平均5.23万/μL(2.9-7.1万/μL)であったが、10.38万/μL(6.9-15.4万/μL)に有意に上昇した。本人の希望により化学療法導入を断念した肝細胞癌1症例を除く3症例に化学療法導入が可能であった。肝細胞症例では、weekly CDDP+5-FU療法を行い、2コースでPDとなった症例と27コースを施行しPRを得たが、汎血球減少、肝機能障害で中止となった症例を経験した。アルコール性肝硬変、S状結腸癌症例では、SOX+C-mab療法を導入した。血小板数はPSEにより5.6万から23.2万/μL に上昇し、治療経過中にCTCAE;Grade3以上の血小板減少は認めず、T-bilの上昇のため休薬を繰り返しているが、減量せずに9コース化学療法を施行し、継続中である。【結語】肝硬変・脾機能亢進症により血小板減少を合併する消化器がんに対し、PSEは安全に血小板数を上昇させ、化学療法の導入を可能にし、治療選択肢が拡がることが示唆された。
索引用語 化学療法, 血小板低下