セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y7-05:

進行大腸癌様の形態を呈したtubulovillous adenomaの1例

演者 中村 久美子(製鉄記念広畑病院)
共同演者 清 裕生(製鉄記念広畑病院), 山内 健史(製鉄記念広畑病院), 森澤 俊英(製鉄記念広畑病院), 日並 義統(製鉄記念広畑病院), 田淵 真彦(製鉄記念広畑病院), 上山 茂充(製鉄記念広畑病院), 藤澤 貴史(製鉄記念広畑病院)
抄録 【症例】症例は80歳代女性。腫瘤の肛門脱出を主訴に近医を受診した。下部消化管内視鏡検査(CS)にて直腸(Rb)に3分の1周にわたる広基性隆起性病変を認め、生検にてtubulovillous adenomaと診断され、当科紹介となった。当院でのCSにて、白色光では緊満感を伴う広基性の腫瘍を認め、粘膜下層(sm)深層以深の癌の浸潤が疑われた。しかし拡大観察では癌のsm深部浸潤を示す所見が確認されなかったため、再度生検を行ったが前回と同様の所見であった。明らかな遠隔転移は認めず、本人・家族の強い希望もあり、十分なインフォームドコンセント(IC)のもと、診断的治療目的に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を予定した。約1カ月後、ESD術前の内視鏡像では、腫瘍は中央に陥凹を呈する2型進行癌様の形態へと大きく変化していた。拡大観察では、中央の陥凹部分を含めいずれも腺腫と考えられる表面構造をしており、明らかな癌のsm深部浸潤を示唆する所見を認めなかったため、再度十分なICを行い、ESDにて一括切除を行った。Liftingは良好であり、術中・術後に著明な偶発症なく経過した。病理学的精査ではtubulovillous adenomaの成分のみであり、粘膜筋板の断絶も見られず、完全切除と判断した。現在、術後2年になるが再発なく経過している。【考察】tubulovillous adenomaはほとんどが直腸に発生するため、外科的治療により人工肛門造設が余儀なくされる場合も少なくなく、治療後の患者のQOLに著しい影響を与える。絨毛腫瘍における癌併存率は40~89.2%と高率な報告があるが、10cm以上でも粘膜層にとどまる症例や悪性化を認めない症例もみられる。近年、大腸においてもESDが普及しつつあるが、外科手術・病理所見から内視鏡的治療の対象となり得たと考えられる症例の報告も見られる。治療後のQOLも考慮して、本症例のように十分なICのもと、診断的治療として内視鏡的治療を慎重に行うことも選択肢の1つであると考えられた。【結語】我々は2型進行大腸癌様の形態を呈したtubulovillous adenomaに対しESDにより完全切除が得られた症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 tubulovillous adenoma, ESD