セッション情報 一般演題

タイトル 32:

S状結腸周囲膿瘍を併発した大腸型クローン病に対しアダリムマブが著効した1例

演者 長井 健悟(大阪大学  消化器内科)
共同演者 新崎 信一郎(大阪大学  消化器内科), 加藤 元彦(大阪大学  消化器内科), 重川 稔(大阪大学  消化器内科), 赤坂 智史(大阪大学  消化器内科), 江崎 久男(大阪大学  消化器内科), 阪森 亮太郎(大阪大学  消化器内科), 薬師神 崇行(大阪大学  消化器内科), 西田 勉(大阪大学  消化器内科), 巽 智秀(大阪大学  消化器内科), 飯島 英樹(大阪大学  消化器内科), 大川 和良(大阪大学  消化器内科), 平松 直樹(大阪大学  消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学  消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学  消化器内科)
抄録 症例は50代男性。1996年に大腸型クローン病と診断され、5-ASA製剤2250mg/日、低残渣食、経腸栄養療法(ED)で当科加療していた。2013年1月より食後の下腹部痛が徐々に増悪し、CPFX 400mg/日投与を開始したが腹痛は改善せず入院となった。既往歴として2007年に胃癌pT1N0M0、pStageIに対し胃全摘術がある。入院時のCDAIスコアは181点で、腹部CTでS状結腸と左骨盤側壁との間に膿瘍を認め、下部内視鏡検査でS状結腸に縦走潰瘍と狭窄を認め、同部位に穿通部と思われるびらんを認めた。S状結腸から骨盤に穿通し膿瘍を形成したと考えられ、絶食・中心静脈栄養にて腸管安静をはかり、抗生剤をCMZ 3g/日に変更するも入院第40病日目の腹部CTでも膿瘍の改善は見られず、発熱、腹痛は持続した。腹腔内膿瘍のコントロールとして経皮的ドレナージ術は骨盤内であり困難なことから手術適応と考えられたが、手術を拒否された。内科的治療として生物学的製剤は感染症の増悪が懸念されたが、患者・家族への十分な説明を行った上で、第43病日目よりCPFX 400mg/日投与下にアダリムマブを開始したところ、第58病日目より発熱、腹痛の改善を認めた。第72日病目に下部消化管内視鏡検査を行いS状結腸穿通部より造影剤を注入したが腸管外への漏出は認めず、第76病日目より経口摂取を開始した。Half EDまで漸増したが発熱や腹痛の再燃はなく、CDAIスコアは66点と改善を認め、退院となった。その後の経過は良好で、退院後1.5か月目に抗生剤を終了し、5か月目の腹部CTでは、腸管外病変は膿瘍も含めほぼ消失し、現在アダリムマブ投与継続中である。クローン病に伴う腸管穿通による腹腔内膿瘍に対して、抗TNFα抗体を用いた報告はまだ十分にない。本症例はS状結腸穿通部に膿瘍を形成し、抗生剤併用下にアダリムマブ投与を行い奏功した貴重な症例であると考えられたため、文献的考察を加え報告する。
索引用語 クローン病, 膿瘍