セッション情報 ワークショップ2「併存疾患と進行度に応じた消化器癌の治療戦略」

タイトル W2-04:

抗血栓薬内服症例における胃ESD後出血に対するリスク因子とその治療戦略

演者 竹内 利寿(大阪医科大学第二内科)
共同演者 梅垣 英次(大阪医科大学第二内科), 樋口 和秀(大阪医科大学第二内科)
抄録 背景:脳血管疾患や心臓病の増加に伴い、抗血栓薬内服症例に対する内視鏡検査も度々経験される。近年、生検などの低侵襲な処置では、抗血栓薬を中止せずに行っても後出血のリスクは低いことが示されている。しかし内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの高侵襲な処置に対しては一定の見解はない。 目的:抗血栓薬内服症例に対する胃ESD後潰瘍からの後出血のリスク因子を明らかにし、その予防法を検討する。 方法:胃腫瘍に対してESDを施行した833例を対象とした。抗血栓薬非内服群(NA群)は743例で、抗血栓薬内服群(A群)は90例(低用量アスピリン (LDA)46例、LDA + チエノピリジン23例、LDA +wafarin21例)であった。抗血小板薬の中止基準はday-6からday2、抗凝固薬の中止基準はday-4からday2とし、抗凝固薬中止中はヘパリン置換を行った。後出血はday3以後の出血と定義し、NA群とA群での後出血率、およびA群における後出血のリスク因子を検討した。 結果:A群の後出血率は23.3%(21/90)で、NA群の2.0%(15/743)に対して有意に高率であった(p<0.001)。A群における後出血の有無は、ESD施行時間、防御因子製剤の追加投与、LDA+wafarinの併用において有意差が認められた(p<0.05)。これらを多変量解析したところ、ESD施行時間のodds比は1.04、LDA+wafarinの併用はodds比14.83、防御因子製剤の追加投与はodds比0.27であった。 結語:抗血栓薬内服症例に対する胃ESDは、非内服症例に比べて後出血率は高く、特にLDA+wafarinの併用が極めて高い後危険因子であった。さらに後出血予防も含めたESD後潰瘍治療として、PPIのみでは不十分であり、その対策として防御因子製剤の追加投与が有効である可能性が示唆された。この結果を基に、prospectiveにpilot studyとしてrabeprazole10mg/day + irsogladine maleate 4 mg/dayを投与し、20例施行したが、後出血率は10%(2/20)であった。現在のところ、retrospectiveの結果と比較して、約半分程度に後出血率は抑制されているが、今後症例数を蓄積して検討したい。
索引用語 ESD, 抗血栓薬