セッション情報 パネルディスカション「炎症性腸疾患の内科・外科境界領域」

タイトル P-09:

内瘻を伴ったクローン病患者に対する生物学的製剤治療効果の検討

演者 荒木 学(大阪大学 消化器内科)
共同演者 新崎 信一郎(大阪大学 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 消化器内科)
抄録 【背景】クローン病(CD)の内瘻に対する生物学的製剤(Bio)の治療効果は低いとされ,特に狭窄を伴う病変には手術を選択される症例も多い.しかし,近年のBio使用経験の増加に伴い,内瘻に対するBioの有効例も報告されており,内瘻の一部にはBioが有効な可能性がある.【目的】Bio投与中に内瘻および腹腔内膿瘍を伴うCD患者の特徴とBioの効果について検討を行った.【方法】2004年6月から2013年9月までにBio投与を開始され,当院でBio維持投与にて経過観察しているCD患者84例中,Bio使用前に内瘻を認めた3例と投与中に内瘻を認めた7例,計10例について患者背景,その後の経過について検討を行った.【結果】Bio導入時の平均年齢は36.5 (21-57)歳,罹病期間は平均9.2 (1-25)年,小腸型・大腸型・小腸大腸型がそれぞれ4例,2例,4例であった.10例中,インフリキシマブ(IFX)が9例でアダリムマブ(ADA)が1例で投与されていた.内瘻の内訳は、回腸-回腸瘻5例,盲腸-回腸瘻1例,盲腸-S状結腸瘻2例、S状結腸からの腹腔内穿通を認めた2例であった.Bio使用前に内瘻を認めた3例はいずれもBioナイーブで狭窄前腸管拡張は認めない症例で手術による治療を拒否したためにBioの導入を行った.そのうち2例は投与後に内瘻が閉鎖し,現在も経過観察中である.内訳は,S状結腸からの穿通により膿瘍形成した症例に対して,経皮的ドレナージが困難な部位であったため,抗生剤で炎症のコントロールを行った上でADAを投与した例と,盲腸-S状結腸瘻を伴った出血を繰り返す症例に対してIFXを投与した例であった.Bio投与中に内瘻を認めた7例中6例でBio導入後平均21.4(0.3-47)か月後に腸管手術を行ったが,手術後もBio投与を継続し内瘻の再発は認めていない.残りの1例と投与前に内瘻を認めBio投与も内瘻の閉鎖を認めなかった1例は内科的治療に抵抗し手術予定となっている.【結論】今回,内瘻を伴うCD患者のうち,手術回避例は10例中2例と少数ながら存在しており,Bioにより手術回避が可能な症例もあることが示唆された.内瘻に対するBioの治療成績について,文献的考察を踏まえて報告する.
索引用語 内瘻, 生物学的製剤