セッション情報 | Young Investigator Session(卒後3-5年迄) |
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タイトル | Y1-08:馬鈴薯肝の1例 |
演者 | 小田桐 直志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科) |
共同演者 | 木岡 清英(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 中井 隆志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 山村 匡史(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 若原 佑平(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平松 慎介(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 末包 剛久(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 山崎 智朗(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐野 弘治(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐々木 英二(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 根引 浩子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐藤 博之(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 河田 則文(大阪市立大学 肝胆膵病態内科学) |
抄録 | 症例は30歳女性。既往歴に特記事項なく、輸血歴や海外渡航歴もない。飲酒はビール350ml/日×5年程度。平成25年1月に健診で初めて肝機能異常を指摘された。5月にも再度肝機能異常を指摘され、その後徐々に全身倦怠感などの症状も増悪したため、8月に当院を紹介受診した。来院時身体所見に特記すべき事なく、血液検査ではAST 332 U/l、ALT 409 U/l、ALP 344 U/l、LDH 238 U/l、γGTP 222 U/l、T-Bil 1.9 mg/dl、D-Bil 0.8 mg/dlと肝胆道系酵素上昇を認めた。WBC 5750 /mm3、Hb 14.2 g/dl、Plt 68000/mm3、CRP 0.31 mg/dlと明らかな炎症所見は認めなかった。凝固能はPT 73.5 %と軽度の低下を認めた。腹部エコーでは、肝は左葉が萎縮し、右葉も内部不整で著明な変形を認めた。肝内に明らかなSOLはなく、腹水も認めなかった。腹部造影CTでも肝両葉に著明な萎縮と変形があり、肝全体には線維化瘢痕に一致すると思われる不均一な濃染を認め、馬鈴薯肝と診断した。入院後、肝庇護薬の投与のみで肝機能異常は徐々に改善した。肝炎の原因精査を行うも、IgM-HAV抗体・HBs抗原・IgM-HBc抗体・HCV-RNA・IgA-HEV抗体は陰性であった。抗核抗体や抗ミトコンドリアM2抗体も陰性で、免疫グロブリンはIgG・IgAは正常、IgMのみ軽度高値を認めた。HLA-DR4陽性であり、自己免疫性肝炎の素因はあるものと考えられた。血小板減少について、慢性肝障害以外の原因精査として抗血小板抗体や抗ヘリコバクタ―抗体も測定したが陰性であった。血液検査による原因特定は困難と判断し、腹腔鏡下肝生検を施行した。採取肝組織では著明な肝線維化と再生結節を認め、広汎な肝細胞の脱落・壊死が目立ったものの、原因につながる特異的所見は認めなかった。馬鈴薯肝は急性肝不全などの急激な肝障害の回復後に認められることが多い。その他には自己免疫性肝炎の経過中や、薬剤・飲酒・放射線照射などによる広汎な肝壊死後の後遺症として生じることもあり、既往や病歴が全くない症例も存在する。本症例では原因になり得るような既往がなく、成因を特定することはできなかった。成因不明の馬鈴薯肝の1例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 | 馬鈴薯肝, 瘢痕肝 |