セッション情報 ワークショップ1「肝細胞癌治療の現況と展望」

タイトル W1-04:

腫瘍マーカー3因子陽性を基軸とした治療モダリティー選択の可能性

演者 上野 昌樹(和歌山県立医科大学 第2外科)
共同演者 谷 眞至(和歌山県立医科大学 第2外科), 川井 学(和歌山県立医科大学 第2外科), 速水 晋也(和歌山県立医科大学 第2外科), 廣野 誠子(和歌山県立医科大学 第2外科), 岡田 健一(和歌山県立医科大学 第2外科), 重河 嘉靖(和歌山県立医科大学 第2外科), 山上 裕機(和歌山県立医科大学 第2外科), 玉井 秀幸(和歌山県立医科大学 第2内科), 新垣 直樹(和歌山県立医科大学 第2内科), 森 良幸(和歌山県立医科大学 第2内科)
抄録 【はじめに】当科では,AFP・AFP-L3分画・PIVKA-IIの腫瘍マーカー3因子陽性の肝細胞癌は,組織学的浸潤傾向が強く,予後不良であることを報告した(Ann Surg 2011).肝細胞癌では種々の治療モダリティーがあるが,今回,腫瘍マーカー3因子陽性の肝細胞癌において,治療モダリティーの違いが生命予後に影響するのかretrospectiveに検討した.【対象】2001年~2010年の間に,腫瘍マーカー3因子陽性(正常上限をカットオフ値とした)・Child-Pugh score 7点以下・ICGR15<40%・ミラノ基準内を満たす初発肝細胞癌に対し,熱凝固治療,或いは切除治療を行った症例を対象とした(熱凝固(RFA)群;n=27.切除(OP)群;n=33).各治療群における腫瘍状況・背景肝機能・無再発生存期間・再発形式・生命予後を比較した.【結果】治療時の主腫瘍径(中央値)は,2.5cm(RFA群),3.5cm(OP群)であった(P<0.01).個数(1/2/3個)は,RFA群で18/4/0,OP群で28/4/1であった(P=0.6).Child-Pugh分類(A/B)は,RFA群で21/6,OP群で32/1であった(P=0.03).ICGR15(中央値)は,23%(RFA群),12%(OP群)であった(P<0.01).RFA群の23例,OP群の16例に再発を認め,無再発生存期間の中央値は各々,361日,851日であった(P=0.01).初回再発形式(重複あり)は,局所・区域内/区域外/肝外・脈管浸潤再発に区分すると, 17/9/7例(RFA群),5/12/1例(OP群)であった.再発に関わる危険因子(odds,95%信頼区間)として,多変量解析より,腫瘍が複数個 (2.47,1.27―4.81),RFA治療の選択(1.43,1.03―1.98)が抽出された.5年生存率は66%(RFA群),75%(OP群)であった(P=0.1).【まとめ】今回の解析集団では,腫瘍因子・背景肝機能に差を認めるものの,多変量解析より,RFA治療で有意に早期の再発を来した.生命予後に有意な差を認めなかったが,RFA治療では,制御困難な再発形式を多く認めた.腫瘍マーカー3因子陽性は,RFA治療と手術治療の両方が検討される際,治療法選択のあらたな判断材料になるかも知れない.
索引用語 肝細胞癌, 腫瘍マーカー