セッション情報 パネルディスカション「炎症性腸疾患の内科・外科境界領域」

タイトル P-01:

無床診療所における内科治療の現状と限界-IBD-P診療実態調査をもとに-

演者 村野 実之(むらのクリニック)
共同演者 小畑 寛純(IBD-Private), 臼井 辰彦(IBD-Private), 小坂 正(IBD-Private), 西下 正和(IBD-Private), 鈴木 亮一(IBD-Private)
抄録 【はじめに】本邦のIBD患者数は著増しており、近い将来大学病院など基幹病院での対応が困難になることが考えられる。我々はIBDを診療の中心とする診療所の集団でIBD診療の向上を図る目的で2010年にIBD-privateを組織した。今回その診療内容の現状と限界を明らかにする目的で入院治療を要したIBD患者の背景及び治療奏効性について検討した。【対象と方法】IBD-P施設に通院され本研究の趣旨に同意が得られたIBD患者1327人(UC1014例、CD313例)中、過去2年間で入院治療を要した69例(72入院)について(1)背景(2)入院理由・各種治療奏効性について検討した。【結果】I.(1)UC:36回(M:F=13:22)、CD:36回(M:F=21:11)(2)UC:治療無効63.9%、出血/穿孔8.3%、dysplasia/癌8.3%、感染症5.6%の他、強直性脊椎炎、無顆粒球症などで入院を要した。緊急入院は22.2%に要し、出血・感染症などであった。治療無効の内訳は5ASA無効8.7%(2/23)、PSL無効26.0%(6/23)、CAP無効34.8%(8/23)、IFX無効8.7%(2/23)、FK506無効17.4%(4/23)の症例であり、主に中等症に対する治療段階で入院を考慮されていた。特に新規治療製剤であるFK506で治療された症例は11例(M:F=3:8)(投与時平均CAI:10.6±2.6)で治療奏功率は63.6%(7/11)であり、奏功例では投与後約2-3週で改善傾向が見られた。また、重篤な副作用は認めなかった。CD:狭窄/腸閉塞38.9%、出血穿孔19.4%、貧血低栄養19.4%、痔瘻/瘻孔11.1%、治療無効5.6%などで、緊急例は27.8%で狭窄症状・腸閉塞が多くを占めていた。【結語】無床診療所でのIBD診療においては軽症例のみならず、中等症IBD患者に対してもCAP・IFX・FK506などを積極的に使用し病勢コントロールが図られていた。しかし突然の急変や悪性腫瘍などに関して厳重な注意が必要であり、時に緊急を要する症例に遭遇するため、近隣の基幹病院との密な連携が重要と考える。本会ではUCの各種治療法の奏効性についても述べたい。
索引用語 無床診療所, 炎症性腸疾患