セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y6-06:

潰瘍性大腸炎結腸全摘後に十二指腸病変と回腸嚢炎を合併した1例

演者 青山 直樹(赤穂市民病院)
共同演者 高尾 雄二郎(赤穂市民病院), 菅原 安章(赤穂市民病院), 三井 康裕(赤穂市民病院), 勝谷 誠(赤穂市民病院), 小野 成樹(赤穂市民病院)
抄録 症例は59歳(当院初診時は52歳)男性。42歳時に潰瘍性大腸炎(UC)のため、結腸全摘術を施行。既往歴はUCの治療に伴うステロイド性大腿骨頭壊死(結腸全摘術と同時期に右人工骨頭置換術と左大腿骨頭骨切り術を施行)と腰椎椎間板ヘルニアである。2007年2月に黒色便を主訴に来院。上部内視鏡検査で十二指腸潰瘍を認め、PPI内服で加療し、軽快。H.Pyloriは陰性で上部内視鏡所見や病理所見からはともに通常の消化性潰瘍と診断され、UCに特異的な所見はなかった。同年6月にも黒色便、心窩部痛を主訴に来院。PPI内服中であったが、十二指腸球部から下行脚上部にかけてUCに類似した浮腫の強い易出血性の粘膜が見られ、不整形潰瘍が多発していた。病理診断では間質に高度のリンパ球・形質細胞浸潤を認め、UC の十二指腸病変として矛盾しない所見で、粉砕した5ASA内服で症状は軽快した。2011年1月には下痢と下腹部痛を主訴に入院となり、下部内視鏡検査の結果、結腸全摘後のJ-pouch内に強い発赤・浮腫をきたした易出血性の粘膜が見られ、浅い潰瘍やびらんが多発していた。病理所見で上記の十二指腸病変と同様にUCの部分病変として矛盾しない結果で、回腸嚢炎と診断した。メトロニダゾール内服で症状は軽快した。以後は再燃と寛解を繰り返しながら、5ASA内服で慎重な経過観察を続けている。UCは回腸嚢炎やbackwash ileitisを除いて定義的には罹患範囲が大腸に限局した炎症性腸疾患とされていた。しかし、UC患者の7.6%にびまん性十二指腸病変を合併するとの報告もあり、UCの疾患概念に再検討を加える必要も生じている。今回、我々はUC結腸全摘後に十二指腸と回腸嚢にUC類似の病変を合併した1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。本例はUCの病因を考える上でも大変意義深い症例の1つと考えられる。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 十二指腸病変