セッション情報 パネルディスカション「炎症性腸疾患の内科・外科境界領域」

タイトル P-06:

潰瘍性大腸炎の外科治療移行に関与する因子の検討

演者 田中 信(京都府立医科大学付属病院 消化器内科)
共同演者 内山 和彦(京都府立医科大学付属病院 消化器内科), 高木 智久(京都府立医科大学付属病院 消化器内科), 内藤 裕二(京都府立医科大学付属病院 消化器内科)
抄録 【目的】中等症・重症潰瘍性大腸炎(UC)症例において、内科治療により寛解導入が得られた症例と外科治療へ移行する症例との臨床的背景の違いを検討した報告は少ない。今回我々は、寛解導入治療が行われた中等症以上の活動期UC患者を対象に、外科治療移行に関与する因子についての後ろ向きコホート研究を実施した。【方法】当院において2008年10月から2013年10月までの期間に、寛解導入治療が行われた中等症以上の活動期UC患者44例(男性26例、女性18例、年齢:平均47.4歳、病型:再燃寛解型41例、初回発作型3例、罹患範囲:全結腸炎型35例、左結腸炎型9例、罹患期間:平均96.0ヶ月)をコホート対象とした。対象患者の予測因子に関するベースラインデータ(性別、年齢、病型、罹患範囲、増悪時のCAI、CRP、Hb、Alb、CMV感染、および各種治療内容)を電子カルテより収集し、外科治療移行をアウトカムとしてデータを収集した。【結果】外科治療移行群は18例、非移行群は26例であった。各因子を比較した単変量解析ではHb低値、Alb低値、タクロリムス(TAC)使用、サイクロスポリンA使用で有意に外科治療に移行した(それぞれp=0.008、0.011、0.01、0.049、オッズ比0.59、0.26、0.10、9.62)。ただし、今回の検討ではTAC未使用症例が少数例であったため、多変量解析ではTAC使用の因子がもっとも強調される結果(p=0.044、オッズ比0.14)となり、今後の症例追加など、さらなる検討が必要と考えられた。その他の治療内容の比較では、寛解導入群では全例5-ASA製剤が投与されていたのに対し、外科治療移行症例では5-ASAアレルギーで投与不可能症例が18例中4例存在していた。免疫調節剤に関しても、副作用による投与継続不能例に外科治療移行症例が多い傾向にあった。【考察】外科治療移行に関して、増悪時の血中Hb、Alb値が重要であると考えられた。治療内容に関してはアレルギーや副作用で、内科治療の選択肢が狭まった症例では寛解導入に至りにくい傾向があり外科治療を視野にいれ治療にあたる必要性があると考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 外科治療移行