セッション情報 一般演題

タイトル 13:

巨大肝細胞癌に対するTACE後にARDSを発症した一剖検例

演者 幡丸 景一(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科)
共同演者 益田 朋典(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 中井 智己(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 石井 達也(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 藪内 洋平(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 松本 久和(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 野口 未央(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 東 俊二郎(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 太田 彩貴子(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 信岡 未由(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 岩上 裕吉(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 三長 孝輔(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 谷口 洋平(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 中谷 泰樹(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 赤松 拓司(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 瀬田 剛史(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 浦井 俊二(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 上野山 義人(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科), 山下 幸孝(日本赤十字社和歌山医療センター 消化器内科)
抄録 【はじめに】TACEは肝細胞癌に対する治療戦略として非常に重要な位置を占めている. 比較的安全な治療として認識されているが, 稀に致死的合併症を起こしうることがある. 今回我々は巨大肝細胞癌に対するTACE後にARDSを来し死亡した一剖検例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.【症例】77歳, 男性. 2011年5月からstage3bの肺癌に対し化学療法が行われていたが, 2013年1月には治療効果が認められなくなり, 経過観察となっていた. 同年2月の腹部単純CTで肝右葉に17cm×12cm大の巨大腫瘍が確認され, 精査加療目的に当科入院となった. 受診時の血液検査では軽度の肝機能障害と炎症反応の上昇を認めた. 肝炎ウイルスマーカーは陰性で, 腫瘍マーカーはAFP, PIVKA-2とも著明な高値であった. 腹部dynamic CTでは内部の造影効果が認められず, 辺縁は動脈相にて軽度高吸収, 平衡相では僅かに低吸収を呈した. CT所見からは内部壊死を伴う巨大肝細胞癌と診断し, 今後腫瘍破裂を起こす危険性も高いと判断したためTACEを施行した. 腫瘍の主な栄養血管は右肝動脈前区域枝と右下横隔動脈であり, それぞれの血管からミリプラチン注入と2mm粒ジェルパートによる塞栓を行った. TACE施行中から軽度酸素化の悪化を認めていたが, 治療終了から2時間経過した頃から酸素化の著明な悪化を認めるようになった. 緊急で胸部CT撮影を施行したところ, 右肺優位にびまん性陰影を認めた. 直ちに抗生剤投与, ステロイドパルス治療を開始したが, 翌日に死亡が確認された. その後病態把握のため, 家族の同意を得た上で病理解剖を行った. 病理組織所見では右肺に高度肺胞水腫の所見が認められ, diffuse alveolar damage像も伴っていた. また肺胞capillaryの空胞状変化が認められ, この空胞状領域にlipiodolなどが沈着していたと推測された. 肝腫瘍は脈管侵襲を伴う典型的な高分化型肝細胞癌であることが確認された. 以上より今回の病態はTACE施行により, 薬剤やlipiodolが肺胞にびまん性に沈着しARDSを発症したことが原因であったと考えられた.
索引用語 TACE, ARDS