セッション情報 一般演題

タイトル 47:

1年間の自然経過を観察し得た膵腺房細胞癌の1切除例

演者 岡部 誠(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
共同演者 大村 亜紀奈(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 吉川 貴章(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 美馬 淳志(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 森澤 利之(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 塩 せいじ(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 宮島 真治(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 木田 肇(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡野 明浩(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 久須美 房子(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 沖永 聡(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大花 正也(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 吉村 玄浩(天理よろづ相談所病院 腹部外科), 藤田 久美(天理よろづ相談所病院 病理科)
抄録 【症例】60歳代 男性【主訴】腹痛【既往歴】虫垂炎【現病歴】受診の10日前より発熱が続き、当院受診した。血液検査で肝胆道系酵素の上昇があり、急性胆管炎が疑われ、腹部超音波検査を行ったところ、膵頭部に約50mm大の腫瘍と肝内胆管の拡張を認めた。腹部造影CT・MRI検査を施行すると同部位に境界明瞭で乏血性の腫瘍があり、尾側の主膵管は拡張していた。また腫瘍により総胆管が圧排され、上流の総胆管も拡張していた。腫瘍の内部は不均一で一部嚢胞様構造も指摘された。ERCPでは、乳頭に腫瘍の露出、主膵管の狭小化、総胆管の拡張を認めた。乳頭部からの生検ではadenocarcinomaが検出され乳頭部癌と診断した。明らかな遠隔転移、血管浸潤がないために外科的切除が可能と考えられ、外科的治療を説明したが、患者と家族は民間療法を希望され、一旦終診となった。その後初診から約1年後に腹痛・発熱を主訴に当院受診した。血液検査で肝胆道系酵素の上昇があり、腹部造影CT検査を施行すると、腫瘍の著明な増大(Φ65mm)を認め、膨張性に発育していた。SMV、門脈は圧排されていたが、閉塞は見られなかった。腫瘍による閉塞性胆管炎と診断し入院加療することとなった。【入院後経過】ERCPで減黄を試みるもカニュレーションできず、PTCDを施行した。また画像上、1年の経過で遠隔転移の出現はなく、治療は外科的切除することとなり、膵頭十二指腸切除術(膵胃吻合)を施行した。病理結果では、腫瘍は膵腺房に類似する上皮細胞の増生から成り、免疫染色でアミラーゼが陽性となった。またSynaptophsinとChromograninAは陰性であった。そのため膵腺房細胞癌と診断した。【考察】本症例は乳頭部生検でadenocarcinomaが検出されていたため、乳頭部癌と診断していたが、1年間の経過で浸潤傾向に乏しく、膨張性発育していることからは乳頭部癌にしては非典型的であった。本症例のように境界明瞭で浸潤傾向に乏しい腫瘍の場合は腺房細胞癌を鑑別にあげる必要がある。【結語】本症例と当院で最近経験した、膵腺房細胞癌の2例を合わせて若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 膵, 腺房細胞癌