抄録 |
右側肝円索は門脈変異を伴うため肝切除において注意が必要である。我々は転移性肝癌に対する右傍正中背側区域切除に際してCTシミュレーションが有用であった1例を経験したので報告する。【症例】71歳、女性。下行結腸癌と同時性多発肝転移2個をS5/8に認めD3郭清を伴う結腸左半切除術を施行 (大腸癌取扱い規約:D, circ, 2型, tub1>tub2>muc, pSE, pN1, sH1(GradeA), sP0, cM0, sR2, fStageIV, fCurC)。術後FOLFOX+BVを6コース施行した。肝S2に新病巣が出現したが、初発巣は縮小を認め肝切除の方針となった。検査所見ではCEA 6.2 ng/mL、CA19-9 92.9 U/mLと高値、ICG停滞率は14.8%と肝予備能低下を認めた。肝ダイナミックCTで肝円索の左側に胆嚢床を認め、画像解析ソフト(ザイオソフト社)を用いた門脈血管構築像では右外側区域枝が先行分岐する3分岐型であった。門脈臍部盲端部背側枝の灌流領域をシミュレーションしたところ2個の腫瘍が切除範囲に含まれたことから、同領域切除とする方針とした。術中は計画どおりグリソンを一括テーピングしたところ、想定したdemarcation lineが確認でき、それに沿い切除した。術後経過は順調で第14病日軽快退院した。【まとめ】化学療法後の肝切除では肝機能温存が求められる。さらに右側肝円索を認識した場合は門脈などの変異の存在することを念頭において、画像解析ソフトを用いた術式検討が重要と考えられた。 |