セッション情報 ワークショップ2「併存疾患と進行度に応じた消化器癌の治療戦略」

タイトル W2-03:

耐術能不良な食道癌症例の治療戦略

演者 相原 洋祐(奈良県立医科大学 第三内科)
共同演者 守屋 圭(奈良県立医科大学 第三内科), 美登路 昭(奈良県立医科大学 第三内科), 野口 隆一(奈良県立医科大学 第三内科), 沢井 正佳(奈良県立医科大学 第三内科), 吉田 太之(奈良県立医科大学 第三内科), 吉治 仁志(奈良県立医科大学 第三内科), 山尾 純一(奈良県立医科大学 中央内視鏡), 福井 博(奈良県立医科大学 第三内科)
抄録 【はじめに】2012年の日本癌治療学会・食道がん診療ガイドラインで、StageIII/III症例には外科的切除が治療の第一選択となっているが、併存疾患のために耐術能不良な症例には、放射線化学療法(CRT)や放射線療法(RT)が行われている。そこで今回、当科における耐術能不良な食道癌症例に対する治療の現状を総括し、その問題点を検討した.【対象】対象は2005年4月から2011年5月までに外科的手術適応を有するのに、非外科的に治療された食道扁平上皮癌22例(男19例、女3例、平均年齢 77.1才)である。併存疾患は心不全3例,肝硬変3例、血液疾患2例などであり、同時性および異時性を含む重複がん症例は全体の52.4%を占め、内訳は多いものから胃癌4例、下咽頭癌2例、肝癌2例であった.腫瘍進行度StageI/II/III は、27/45/32(%)であった。【治療成績】治療は、Stage I全6症例のうち1例にはCRT、5例にはRTを行い両群ともに100%の完全寛解(CR)率を得たが,RT治療群では経過観察中に40%にあたる2例で局所再発を認めた.StageII全9症例のうち5例にCRT,4例にRTを行い,奏功率(CR+PR(部分寛解))はそれぞれ100%と75%であった.しかし両群のCR維持率は80%と25%で3倍以上の開きがあった.Stage IIIは全6症例ともCRTを行い,奏功率100%と良好であったが,CR維持率は17%にとどまった。StageIIIの治療前、摂食困難であった6例中5例(83%)の症例で治療後、摂食状況が改善した。早期合併症として、CRT群の66.7%、 RT群の12%にGrade 3以上の血球減少症を認め、RT治療群で明らかに低率であった.晩期合併症としては放射線性心膜炎,骨髄線維症を各1例ずつに認めた.治療関連死は認めなかった【結論】併存疾患や高齢のため、耐術能不良な食道癌症例に対する集学的治療の成績は概ね良好であった。治療効果やQOLの改善には各症例に適した治療法の選択が必要と考えられた.
索引用語 食道癌, 非外科的治療