セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y4-02:

食道癌に対する化学療法後に著明な低Na血症を呈しcisplatinによるRenal Salt-Wasting Syndromeと診断した1例

演者 坂谷 彰彦(大手前病院 消化器内科)
共同演者 笹井 保孝(大手前病院 消化器内科), 西田 直浩(大手前病院 消化器内科), 阪本 めぐみ(大手前病院 消化器内科), 上ノ山 直人(大手前病院 消化器内科), 木下 和郎(大手前病院 消化器内科), 有馬 良一(大手前病院 病理検査部), 土井 喜宣(大手前病院 消化器内科)
抄録 【症例】83歳男性【主訴】倦怠感・食思不振【既往歴】特記すべきことなし【現病歴】胸部食道癌に対し放射線併用 low dose FP療法を施行し、CRとなっていた。化学療法中、経口摂取量低下時にも一過性の低Na血症が見られたが、塩分の補充で改善した。また、退院後に水分摂取過多となった際にも見られたが、この際には飲水制限で改善が得られた。しかしながら、化学療法終了から17ヶ月後に腫瘍再発による食道狭窄を来たしmetallic stentを留置することとなった。同治療に伴う絶食期間中に維持輸液を行ったところ血清Na濃度が123mEq/Lまで低下し、全身倦怠感の訴えが見られた。【経過】低Na血症の原因検索目的に内分泌疾患も含めて鑑別に挙げ精査を行った。その結果、SIADHを含めた諸疾患を積極的に示唆する所見は認められなかった一方で、尿中Na排泄率の抑制が見られなかったことからRenal Salt-Wasting Syndromeと診断した。治療として積極的にNaClの投与量を増やし最終的に1日357mEqの投与で血清Na濃度の低下が見られなくなった。退院時には食事もできるようになり、NaCl末1日12gの内服処方し外来で観察したところ、その後低Na血症による症状の再出現は見られずに経過した。【考察】これまでにもcisplatin投与後に低Na血症を呈する症例の原因としてSIADHが知られてきたが、近年新しい病態としてRenal Salt-Wasting Syndromeが注目され始めている。本病態は軽症であれば顕在化しにくく、飲水制限で改善することもあるなどSIADHと混同されやすいこと、依然として病態の認知度が高くないことが、その診断を困難にしていると考えられる。われわれが検索したかぎり過去に本邦での報告例は7例しかなく、食道癌の治療後に出現した報告は自験例が2例目であった。報告例の極めて少ない病態であり、示唆に富む症例と考えられたことから若干の文献的考察を交えて報告する。
索引用語 食道癌, 化学療法