共同演者 |
横濱 桂介(大阪医科大学 消化器内科), 大濱 日出子(大阪医科大学 消化器内科), 筋師 徹也(大阪医科大学 消化器内科), 土本 雄亮(大阪医科大学 消化器内科), 朝井 章(大阪医科大学 消化器内科), 福西 新弥(大阪医科大学 消化器内科), 竹下 篤(大阪医科大学 病理学教室), 津田 泰宏(大阪医科大学 消化器内科), 樋口 和秀(大阪医科大学 消化器内科) |
抄録 |
肝血管肉腫は肝原発悪性腫瘍の中で発生頻度は2%未満とされ、極めて稀な疾患である。既報では術後に切除標本で診断されることが多く、経皮的針生検での診断は非常に難しいとされている。今回肝全体に多発性に認めた腫瘍病変に対して診断に苦慮し2回の肝生検の結果、確定診断を得られた症例を経験したため報告する。【症例】50歳代、女性。既往歴、家族歴、生活歴特記すべきことなし。平成23年5月頃、倦怠感、発熱が出現し当科受診、腹部造影CT検査にて肝に動脈相で一部濃染するびまん性陰影を認め精査目的で入院となる。入院時身体所見で著明な肝腫大を認め、血液検査上、WBC 5080, Hb 7.7 g/dl, PLT 24.8, Alb 3.4mg/dl, T-Bil 1.4mg/dl, AST 48U/l, ALT 27U/l, LDH 360U/l, ALP 618U/l, γGTP 157U/l, CRP 0.5mg/dl, PT 72% 各種腫瘍マーカーは陰性であった。上部下部消化管内視鏡異常なし。EOB-MRIにて腫瘍部位は肝細胞相で淡く取り込みの低下を認めた。血管系腫瘍、転移性腫瘍などを鑑別に経皮的肝生検を施行したが、炎症細胞浸潤と一部線維化を伴う線維芽細胞の浸潤を認めるのみであり炎症性偽腫瘍が疑われた。しかし全身精査の結果、炎症性疾患は否定的であったため再度経皮的肝生検を施行した。その結果、異型のある短紡錘形細胞の増殖を認め、免疫染色にてCD34, Factor VIIIが陽性を示し、肝血管肉腫と診断された。腫瘍は肝全体に広がっており、また肝予備能もChild-pugh 7点、Bであり肝切除は不可能であり、PSも2程度と不良であったため、IL-2点滴製剤にて治療を開始した。治療開始後肝腫大は改善傾向を示したが、電解質異常、浮腫が出現、好中球数も低下しIL-2製剤の継続が困難となり、全身状態が悪化し永眠された。【考察】肝原発血管肉腫は多彩な画像所見をとることが多く診断には組織生検が必須であるが、経皮的生検後では出血のリスクがあり、得られる組織片が小さく診断が難しいとされる。今回診断に苦慮したが、複数回の針生検にて確定診断を得られた肝血管肉腫の一例を経験したため文献的考察を加えて報告する。 |