セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年迄)

タイトル Y5-10:

右水腎症と十二指腸狭窄で発症した原発不明の癌性腹膜炎の1例

演者 下河辺 嗣人(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科)
共同演者 福本 晃平(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 金政 和之(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 大野 智之(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 田中 斉祐(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 北村 陽子(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 角谷 彰(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 竹谷 裕栄(市立奈良病院消化器肝臓病センター 消化器内科), 北井 祥三(市立奈良病院消化器肝臓病センター 外科), 山里 有三(市立奈良病院消化器肝臓病センター 外科), 今井 俊介(市立奈良病院消化器肝臓病センター 病理診断科)
抄録 【症例】70歳代女性.高血圧症にて近医へ通院中に尿潜血陽性を指摘され,泌尿器科で右水腎症と診断されるも原因特定に至らなかった.2ヶ月後に腹部膨満感,食欲低下,体重減少を来し当科へ紹介となった.腹部CT・MRI検査にて右優位の両側水腎症,十二指腸下行脚の狭窄,膵頭部背側・十二指腸周囲~右腎門部周囲の軟部影を認めたが原因疾患は確定できなかった.上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚の浮腫状狭窄を認めたが,明らかな上皮性腫瘍は認めなかった.下部消化管内視鏡検査では異常を認めず,泌尿器科・婦人科領域にも悪性疾患を認めなかった.腹膜・後腹膜の悪性腫瘍を疑ったが後腹膜線維症の可能性も否定できず,まずステロイドパルス療法を施行した.しかし効果は限定的で経口摂取不能であったため,胃空腸バイパス術ならびに病理組織検査を施行した.開腹所見では明らかな腹水を認めず,肉眼的に腹膜播種を疑う結節等は認めなかったが,腹腔洗浄細胞診で腺癌の結果であった.画像検査で異常を指摘された部位に一致して強固な癒着と硬結を認め,癌性腹膜炎が疑われた.同部位からの病理組織検査でも腺癌の所見を認めた.FDG-PETでは右側腹部にのみ異常集積を認めた.免疫染色ではCK7(+),CK20(-)であったが,その他の免疫染色結果からは腺癌の原発特定には至らなかった.【考察】原発不明の癌性腹膜炎または腹膜・後腹膜原発腺癌の可能性を疑ったが,腹膜・後腹膜原発腺癌としては腹膜原発漿液性乳頭状腺癌の可能性が考えられた.診断に難渋し,極めて稀な症例と考えたため,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 癌性腹膜炎, 十二指腸狭窄