セッション情報 一般演題

タイトル 35:

術前診断に苦慮した低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例

演者 奥野 倫久(一般社団法人日本海員掖済会 大阪掖済会病院 外科)
共同演者 澤田 鉄二(一般社団法人日本海員掖済会 大阪掖済会病院 外科), 城月 順子(一般社団法人日本海員掖済会 大阪掖済会病院 外科), 村橋 邦康(一般社団法人日本海員掖済会 大阪掖済会病院 外科), 西野 光一(一般社団法人日本海員掖済会 大阪掖済会病院 外科), 平川 弘聖(大阪市立大学大学院腫瘍外科)
抄録 大腸癌取扱い規約第8版によると、虫垂腫瘍のうち低異型度虫垂粘液性腫瘍(low grade appendiceal mucinous neoplasm)は、旧規約上の粘液嚢胞腺腫の大部分と粘液嚢胞腺癌の一部に該当する稀な疾患であり、術前診断が困難である。今回我々は、低異型度虫垂粘液性腫瘍と診断された1例を経験したので報告する。【症例】76歳男性。数年前から急性大動脈解離にて前医にてフォローされていた。CT検査で、右下腹部に増大傾向を示す12cm大の腫瘤指摘され、当院紹介。右下腹部に腫瘤触知し、造影CT検査では、回盲部に接して約12cmの内部造影効果の乏しい嚢胞性腫瘤を認めた。MRI検査では、T1 low、T2 high intensityのやや内部シグナル不整な嚢胞状で、局所的壁肥厚や、明らかな実質成分のない腫瘤であった。腹部超音波検査では腸管との連続性は不明瞭で、海綿状の嚢胞を示した。血清CEA、CA19-9は陰性であった。増大傾向にあること、感染や破裂の可能性から外科的切除を選択、術中所見では盲腸壁と強固に癒着した弾性軟の薄い皮膜に包まれた腫瘍と、腫瘍背側に菲薄化した虫垂を認め、腫瘍とともに盲腸部分切除術を施行した。病理検査にてlow grade appendiceal mucinous neoplasmと診断された。【結語】本症は術前診断および、良悪性の判断が困難であるとされている。右下腹部虫垂付近の嚢胞性腫瘤を認めた場合には、本症を考慮した鑑別診断が必要であり、また手術の際には腹膜偽粘液腫発症予防のため、嚢胞壁の損傷なき手術操作が必要と考えられた。
索引用語 虫垂腫瘍, 低異型度虫垂粘液性腫瘍