セッション情報 ワークショップ2「併存疾患と進行度に応じた消化器癌の治療戦略」

タイトル W2-08:

高齢者大腸癌症例に対する腹腔鏡手術の検討

演者 向川 智英(奈良県立奈良病院 外科)
共同演者 石川 博文(奈良県立奈良病院 外科), 高 済峯(奈良県立奈良病院 外科), 渡辺 明彦(奈良県立奈良病院 外科)
抄録 【目的】併存疾患を有することが多い高齢者大腸癌症例に対する腹腔鏡手術の妥当性についてretrospectiveに検討した。【対象と方法】2008年1月~2013年10月までに腹腔鏡手術を行った65歳以上の大腸癌症例143例を、64~74歳の前期高齢者71例(A群)、75~84歳の後期高齢者62例(B群)、85歳以上の超高齢者10例(C群)に分けた。これらの臨床病理学的特徴と手術成績、術後合併症について検討した。【結果】以下結果は(A群、B群、C群)で表示する。性別は高齢ほど女性の割合が多く(39%、42%、60%)、BMIは3群間で同等であった(22.3、22.6、21.2)。RSを含む結腸癌の比率はC群で多かった(78%、74%、100%)。併存疾患を有する率は高齢ほど多く(51%、68%、70%)、麻酔リスクASA値は高齢ほど高かった(1.6、2.0、2.2)。併存疾患では循環器系疾患が最多で、B、C群で高率であった(28%、42%、40%)。またB、C群では認知症が認められた(0%、5%、10%)。臨床病期ではC群でstage0, I期が多かった(44%、37%、60%)。3群リンパ節郭清施行率は高齢ほど低く(72%、60%、20%)、根治度A手術は(90%、95%、80%)とC群でやや低かった。手術時間は(276、250、193分)とC群が有意に短く、出血量も(152、220、66.5mL)とC群が有意に少なかった。歩行開始日は(1.9、2.4、3.1日)とC群で長く、排ガス発生、食事開始までの期間は(2.3、2.5、2.3日)、(3.0、3.3、2.9日)と差はなかった。術後合併症では、せん妄が(0%、2%、20%)、イレウスが(6%、3%、30%)、排尿障害が(4%、8%、10%)とC群で多くみられた。術後縫合不全発生例を除いた術後在院日数は(13.1、12.6、15.0日)とC群でやや長かった。【まとめ】現在の当院での適応においては、高齢者大腸癌症例に対して腹腔鏡手術は比較的安全に行われていると言えるが、周術期管理においては高齢者特有の併存疾患や合併症が存在することに留意する必要がある。
索引用語 大腸癌, 高齢者