セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR-07:

イレウス症状で発症し、術後の病理組織にて虫体が確認された小腸アニサキス症の1例

演者 森尾 慶子(山陰労災病院 内科)
共同演者 田本 明弘(山陰労災病院 内科), 角田 宏明(山陰労災病院 内科), 向山 智之(山陰労災病院 内科), 神戸 貴雅(山陰労災病院 内科), 西向 栄治(山陰労災病院 内科), 前田 直人(山陰労災病院 内科), 謝花 典子(山陰労災病院 内科), 岸本 幸廣(山陰労災病院 内科), 古城 治彦(山陰労災病院 内科), 山根 祥晃(山陰労災病院 外科), 野坂 仁愛(山陰労災病院 外科), 庄盛 浩平(山陰労災病院 病理科)
抄録 消化管アニサキス症は魚類を介したアニサキス幼虫の摂取に起因する寄生虫疾患である.その中で腸(小腸・大腸)アニサキス症は胃アニサキス症と比べて数%と比較的稀であり、直接の確認が困難なことも多く急性腹症で他の疾患が疑われ外科的に腸管切除される例もみられる.今回、問診で生魚の摂取を確認しながらも、術後瘢痕による絞扼性イレウスが強く疑われたために開腹下に腸管を切除し、切除標本の病理組織学的検索で初めて小腸アニサキス症と診断された症例を経験したので、若干の文献的考察を含めて報告する.患者は40歳代の男性、11歳時に虫垂摘出術の既往がある.夕食に寿司を摂取した翌午前に臍周囲痛が出現し、徐々に増悪するため同夕に受診した.右下腹部の手術痕近傍に圧痛を伴う超手拳大の硬結を触知し、炎症反応の高値とともに腹部単純撮影で小腸に鏡面像、腹部CTで限局性の回腸壁肥厚を認めた.手術瘢痕による絞扼性イレウスを疑い緊急開腹術を施行、回盲部より30cm口側に著明に発赤した腸管を認め、その中心付近の漿膜面約5mm径の結節様病変を含めて小腸部分切除を行った.切除生標本では虫体は確認できなかったが、病理組織検査で固有筋層内にアニサキス虫体が認められ、小腸アニサキス症と最終診断した.胃アニサキス症同様、腸アニサキス症の診断においても生魚の摂取歴など注意深い病歴の聴取が重要であることは論を俟たないが、本例のように絞扼性イレウスとの鑑別に苦慮する症例も存在することを再認識しておく必要があると考えられた.
索引用語 アニサキス, 病理診断