セッション情報 一般演題

タイトル O-01:

多発腫瘤を形成した好酸球性大腸炎の一例

演者 原田 馨太(岡山大学病院 光学医療診療部)
共同演者 岡田 裕之(岡山大学病院 光学医療診療部), 平岡 佐規子(岡山大学病院 消化器内科), 筑木 隆雄(岡山大学病院 消化器内科), 喜多 雅英(岡山大学病院 消化器内科), 松原 稔(岡山大学病院 消化器内科), 川野 誠司(岡山大学病院 光学医療診療部), 那須 淳一郎(岡山大学病院 消化器内科), 河原 祥朗(岡山大学病院 光学医療診療部), 山本 和秀(岡山大学病院 消化器内科)
抄録 【緒言】好酸球性消化管疾患は、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に大別される。いずれも原因は食餌性刺激に対するアレルギー反応と推論されているが、未だ明らかではない。また疫学的にもその実態は十分に把握されていない。今回我々は多発腫瘤を形成した好酸球性大腸炎の一例を経験したので報告する。【症例】70歳台、男性。気管支喘息で当院に通院中で、4年前に検血で好酸球増多(白血球数32,910/μl, 好酸球60.0%)を指摘され、入院しステロイド治療を受けた。精査するも原因は明らかでなく、アレルギー体質に関連したものではないかと考えられた。治療により白血球数、好酸球数は正常値に復し退院となった。その後も何度か好酸球増多を指摘されて、外来でステロイド治療を繰り返した。最近1年以上は、好酸球数は正常範囲内で推移しており、特に治療を行っていない。今回便柱狭小の訴えで当科を受診した。上下部消化管とも内視鏡受検歴はなかった。内視鏡直前の検血では、白血球数4,530/μl、好酸球5.0%であった。大腸内視鏡を施行したところ、盲腸から肝弯曲部にかけて1型進行癌様の腫瘤が多発していた。腫瘤はいずれも硬く、うち6病変から生検を行った。CTでは腸管傍リンパ節に腫大が認められて転移が疑われた。以上の画像診断の段階では悪性腫瘍が強く疑われた。ところが生検病理は、6病変全てで粘膜固有層内に20/HPFを越える好酸球の浸潤が認められ、悪性腫瘍の所見は全く認められなかった。病理結果を以て、腫瘤形成した好酸球性腸炎と診断し、経過観察の方針とした。上部消化管内視鏡に異常所見はなく、食道、胃、十二指腸粘膜からそれぞれ生検を加えるも組織に好酸球浸潤は認めなかった。【考察】好酸球性胃腸症は、生検による好酸球浸潤の証明が最も診断に有用とされている。全消化管に生じうるが、既報では上部消化管に発生したものが多い。特に大腸のみに限局して生じるのは10%程度とされる。肉眼形態はびらんや浮腫など多岐に渡るが、腫瘤形成を主な所見としている報告は極めて少ない。今回我々は、稀な、多発腫瘤を形成した好酸球性大腸炎の一例を経験したので報告した。
索引用語 好酸球性腸炎, 腫瘤形成