セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR-06:

悪性腫瘍との鑑別に苦慮した肝腫瘤の一例

演者 西井 豪(独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター 内科)
共同演者 藤田 勲生(独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター 内科), 豊川 達也(独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター 内科), 徳永 尚之(独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター 外科), 稲垣 優(独立行政法人 国立病院機構 福山医療センター 外科)
抄録 症例は64歳女性、主訴は右側胸部痛、背部痛。既往歴にめまい、高血圧がある。近医で肝腫瘤を指摘され精査加療目的に当院紹介となった。入院時血液検査で肝機能異常なく、HBV(-)、HCV(-)であり、CEA、AFP、CA19-9、PIVKA-IIは基準値内であった。当院で施行した造影MRIでは、肝臓S8に辺縁が造影され内部の造影効果は乏しく、肝細胞相ではdefectとなる径25mm大の占拠性病変が認められ、拡散強調画像ではそれほど高信号とはなっていなかった。腹部造影CTでは同部位に辺縁がリング状に造影される径25mm大の占拠性病変を認め、内部は一部結節状の淡い造影効果が見られた。腹部超音波検査では同部位に径24mm大の周辺high echo、内部low echoの辺縁不整な占拠性病変が認められた。以上より、肝内胆管癌や転移性肝腫瘍が疑われたが、膿瘍や肉芽などの炎症性腫瘤の可能性も考えられた。転移性肝腫瘍を疑い上下部内視鏡検査施行したが悪性病変は認めず、CTでも悪性所見は確認されなかった。また腫瘤に対して超音波ガイド下吸引肝生検施行したが非腫瘍性との所見が得られ確定診断には至らなかった。肝内胆管癌を否定し得えないため、肝臓S8亜区域切除施行した。術中所見では腫瘍は肝臓S8天頂部に位置し表面にわずかに露出していた。切除標本を肉眼的に観察すると、内部に一部結節を認める暗赤色の境界明瞭な約25mm大の病変を認めた。病理所見では境界明瞭な病変に一致して中央部に出血と壊死組織があり、周囲に鉄沈着を伴う瘢痕様の組織がみられた。また拡張血管や肉芽様の成分が混在しており、胆管成分も取り込まれているが全体的には腫瘍とは考えにくく、中心に出血や壊死を伴った瘢痕様組織との診断であった。本症例における瘢痕性腫瘤の成因は不明であり術前診断に難渋した。今回我々は超音波ガイド下生検でも確定診断が得られず、悪性腫瘍との鑑別に苦慮した肝腫瘤の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝腫瘤, 瘢痕