セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR-05:

注腸造影用バルーンの使用が摘出に有効であった直腸異物の1例

演者 辻 真弘(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科)
共同演者 横峰 和典(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 皿谷 洋祐(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 平田 尚志(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 谷岡 大輔(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 田中 盛富(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 藤本 剛(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 宮下 真奈備(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科), 田中 彰一(国立病院機構 岩国医療センター 消化器内科)
抄録 症例は30歳代の米国人男性。性的な理由からペットボトルのキャップを直腸に挿入したところ、抜去困難となった。何回か排出を試みるも排出困難なため、翌日当院救急外来を受診された。来院時37度台の発熱および血液検査にて軽度の炎症所見は認められたものの、身体所見にて腹痛は認められなかった。腹部CTでは、異物は直腸Rsに径4.5cm x 6.5cmほどの円柱状の形態として認められ、直腸には浮腫性の壁肥厚や周囲脂肪織の濃度上昇を認めていた。しかし、明らかな穿孔所見は認められなかったため、内視鏡下の摘出術を施行した。内視鏡下に観察すると、直腸Rsに円筒状のペットボトルのキャップが先端を口側として挿入されていた。肛門側のキャップの辺縁は直腸粘膜にめり込んでおり、肛門側は浮腫状で一部潰瘍を形成していた。既報を参考にしてアカラシアバルーンを用いて摘出を試みたが、肛門側に直腸粘膜がめり込んでいるために異物の可動が困難であり、アカラシアバルーンが抜けてしまい摘出することができなかった。次に注腸造影用バルーンを用いて摘出を試みた。すなわち、通常肛門内で拡張させるバルーンをペットボトル内で拡張させ、肛門外で拡張させるバルーンをペットボトル外で拡張させた。この状態で牽引することにより、疼痛なく異物を摘出することができた。摘出した異物は直径4.5cm、高さ5.5cmであった。潰瘍を形成していたため、1日入院のうえ経過観察を行ったが、経過良好で翌日退院となった。直腸異物の摘出の際には様々な工夫がなされているが、大きさや形状によっては、摘出困難で人工肛門造設術を余儀なくされる症例がある。また、摘出の際に直腸粘膜を損傷することによる消化管穿孔のリスクも考えられる。本症例のように径が大きな異物に対しては、注腸造影用バルーンを用いて肛門側を拡張させつつ摘出術を施行することによって、粘膜を損傷することなく安全に異物を摘出できるものと考えられる。本症例は今後の治療において示唆に富む症例と考えられたために、文献的考察をふまえて報告する。
索引用語 直腸異物, 注腸造影用バルーン