セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR-07:

高齢者B型肝炎ウイルスキャリアからの急性発症が疑われた1例

演者 青木 啓純(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
共同演者 原 裕一(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 佐々木 恭(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 小山 展子(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 中島 義博(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 河瀬 智也(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 仁科 惣治(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 富山 恭行(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 吉岡 奈穂子(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 吉田 浩司(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
抄録 B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアからの急性発症は一般的には若年者(40歳未満)に認められ、B型慢性肝炎の急性増悪との鑑別が困難な場合も多い。今回、高齢者HBVキャリアからの急性発症と考えられる1例を経験したので報告する。症例は67歳の女性で以前よりHBs抗原陽性を指摘されていたが、定期的な健康診断でも肝機能異常を指摘されたことはない。2013年1月下旬に胸焼けを主訴に近医を受診して血液検査を受けたところ、著明なトランスアミナーゼの上昇を指摘され当科へ紹介された。既往歴に特記事項なく、家族歴では母親がHBVキャリアであった。5ヶ月前から健康食品の服用歴があるが、飲酒歴はなかった。入院時血液検査所見は以下の通りであった:Tbil:1.3 mg/dL, Alb:3.4g/dL, ALT755U/L, AST550 U/L, IgM-HBc (-), HBe抗原(+), HBe抗体(-),HBVDNA9.0log copies/mL, Genotype C. 肝生検所見はリンパ球を中心とした著明な炎症細胞浸潤を門脈域と小葉内に認め、piecemeal necrosisも伴っていた、門脈域の線維性拡大は軽微であり、diastase処理PAS染色では小葉内にKupffer細胞の浸潤を中等度に認めた。以上の組織学的所見は慢性炎症よりもむしろ急性炎症を示唆する所見であった。67歳の年齢にもかかわらずHBe抗原陽性でHBV DNAも高値であることから、慢性肝炎の急性増悪よりもキャリアからの急性発症を疑った。HBVキャリアの診療においては数十年にわたり肝炎の発症を認めない、いわゆる無症候性HBVキャリアからの急性発症も起こりうることを念頭においてフォローアップする必要があると考えられた。
索引用語 B型肝炎, 高齢者