セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR-13:

潰瘍性大腸炎を合併したIdiopathic Duct-centric Chronic Pancreatitis(IDCP)と考えられた1例

演者 宗近 由貴(県立広島病院 消化器内科)
共同演者 桑田 幸央(県立広島病院 消化器内科), 國原 紗代子(県立広島病院 内視鏡内科), 小道 大輔(県立広島病院 消化器内科), 大村 祐乃(県立広島病院 消化器内科), 東條 加奈(県立広島病院 内視鏡内科), 大谷 一郎(県立広島病院 消化器内科), 辰川 裕美子(県立広島病院 消化器内科), 平本 智樹(県立広島病院 内視鏡内科), 平賀 裕子(県立広島病院 内視鏡内科), 渡邊 千之(県立広島病院 消化器内科), 北本 幹也(県立広島病院 消化器内科), 山田 博康(県立広島病院 消化器内科), 隅岡 正昭(県立広島病院 内視鏡内科), 西阪 隆(県立広島病院 臨床研究検査科)
抄録 患者は38歳男性。X年3月末、急性膵炎の診断で入院加療を受け、5月22日に再発し再入院した。MRCPで膵頭部の主膵管は描出されず尾側主膵管に軽度拡張を、腹部エコー上膵頭部に低エコー領域を認めた。PET-CTでは膵頭部にSUVmax2.7の軽度集積があり、膵頭部腫瘍疑いで5月30日当院に精査目的で入院した。採血では腫瘍マーカーや抗核抗体は陰性、IgG4も正常値であった。腹部エコーでは、膵頭部に低エコー域を認め、同部より尾側の主膵管は軽度拡張していた。CTでは膵体尾部の主膵管の拡張を認めたが、明らかな腫瘤は指摘できなかった。EUSで膵頭部に20mm大の低エコー腫瘤様の所見を認め、EUS-FNAを行ったが悪性所見は認めなかった。ERCPでは膵頭部主膵管に18mm長の狭窄と尾側膵管の軽度拡張を認めた。ENPD留置による膵液細胞診を計8回提出し、悪性所見は見られなかった。検査所見から膵頭部癌が否定できず、十分なI.C.後、手術を行う方針となった。術前検査目的で下部消化管内視鏡検査を施行したところ、下部直腸に粘膜面の血管透見消失像とびまん性の発赤・びらんを認め、直腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断した。以上よりIdiopathic Duct-centric Chronic Pancreatitis(IDCP)を疑い、手術は中止とし、プレドニゾロンとペンタサの内服を開始した。内服開始17日後のERCPで膵頭部の主膵管狭細像は著明に改善していた。本症例は、当初膵頭部癌と鑑別が困難であったが、ステロイド投与で主膵管狭細像の改善を認め、潰瘍性大腸炎を伴っていたことからもIDCPであると考えられた。我が国の自己免疫性膵炎のほとんどはIgG4関連疾患であるlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)であるが、IDCPはLPSPに比して潰瘍性大腸炎を合併する確率が高く、LPSP様の血清所見を認めないのが特徴である。本症例は明確な病理組織所見が得られず、IDCPの国際コンセンサス診断基準では準確診の結果であった。IDCPはわが国では極めてまれな疾患で、本症例は今後の病態解明のためにも貴重な症例であると考え、今回若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 IDCP, 自己免疫性膵炎