セッション情報 | 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄) |
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タイトル | SR-16:腹痛を契機に診断された巨大胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)の一切除例 |
演者 | 小山 展子(川崎医科大学 肝胆膵内科学) |
共同演者 | 吉田 浩司(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 佐々木 恭(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 中島 義博(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 河瀬 智哉(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 富山 恭行(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 仁科 惣治(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 吉岡 奈穂子(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 原 裕一(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学), 中村 雅史(川崎医科大学 消化器外科学), 伊禮 功(川崎医科大学 病理学1) |
抄録 | 【症例】49歳女性.激しい上腹部痛・腹部膨隆を認め,CTで肝内に巨大な嚢胞性腫瘤を指摘され,紹介入院となった.入院時血液検査では炎症反応と肝胆道系酵素の上昇を認めた.腹部造影CTで肝左葉全域から右葉にかけて18cm大の多房性の嚢胞性腫瘤を認め,内部には乳頭状構造があり,肝門部や腫瘤末梢で胆管との交通を認めた.ERCでは十二指腸乳頭部に白色調の粘液栓を認め,除去により黄白色の大量の粘液の排出を認めた.胆管造影で多房性の嚢胞が描出され,ENBDを留置した.経口胆道鏡では上部胆管に乳頭状隆起を認め,周囲にはイクラ状粘膜を認めた.細胞診・胆管生検ともに悪性診断には至らなかった.ICG 15分値は3%と肝機能は良好であり,治療は肝左3区域切除・肝外胆管切除・胆嚢摘出術を行った.切除標本の肉眼像では,嚢胞状に拡張した肝内胆管病変に,内腔へ発育する乳頭状隆起を認めた.組織学的には内部に好酸性で豊富な細胞質を有した異型細胞が乳頭状・樹枝状に増殖し,一部間質への浸潤を認めた.免疫組織学的にはMUC2,MUC5ACが陽性で,MUC1は陰性であり,胆管内乳頭状腫瘍intraductal papillary neoplasm of the bile duct (Papillary adenocarcinoma)と診断.また切除断片(総胆管・後区域枝)は,いずれもBilIN2病変を認めた.術後,発熱・炎症反応の上昇を認め,術後8日目の造影CTで胆管空腸吻合部周囲に胆管と連続性を認める被膜様構造を有した嚢胞性病変を認め,bilomaと診断.感染合併を認め,経皮的ドレナージ,経胃的ドレナージにて改善.術後103日目に退院となった. 【考察】胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)は、胆管内腔に乳頭状増殖を示す胆管上皮性腫瘍と定義される.IPNBは多量に分泌される粘液によって,病変の範囲を十分に評価できないことも多く,胆道ドレナージにて可能な限り粘液を十分に排除した上で表層拡大進展の診断を行う必要がある.切除断端に上皮内異型病変を認めたものは,断端陰性と比較し全生存率・無再発生存率に関し有意に低いとされており,本患者では予後不良が予想されるため今後の厳重な経過観察が必要である. |
索引用語 | IPNB, 嚢胞性腫瘤 |