セッション情報 一般演題

タイトル O-10:

Pulmonary tumor thrombotic microangiopathyによる肺高血圧症が疑われた胃癌の1 例

演者 五嶋 敦史(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学)
共同演者 西川  潤(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 中村  宗剛(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 西村 純一(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 岡本 健志(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大学大学院 医学系研究科 消化器病態内科学)
抄録 症例は60歳代, 女性. 2012年11月より労作時呼吸困難, 全身倦怠感を認め, 徐々に増悪するため, 2013年1月に近医を受診した. 心エコー検査で肺動脈圧90mmHg台の肺高血圧及び腹部CTで多発するリンパ節腫大を認め, 精査加療目的で当院に紹介となった. 肺高血圧の原因として肺塞栓症が考えられたが, 造影CTでは肺動脈に血栓形成は認めなかった. 肺血流シンチでは, 両側上肺野に楔形の血流欠損域を認め, 末梢肺動脈の塞栓が示唆された. また, 来院時より黒色便とHb 5.8g/dlの貧血を認めたため, EGDを行ったところ, 胃角部後壁に3cm大の不整形潰瘍性病変を認め, 生検で印環細胞癌が診断された. 腹部大動脈周囲リンパ節#16b1への転移を認め, 手術適応はないと判断し, 化学療法を行う方針となった. 多量輸液を必要とするシスプラチンの投与は肺高血圧, 呼吸不全の増悪をきたす可能性が考えられ, 2013年2月よりS-1単剤での内服加療を開始した. S-1投与開始から2週間で肺動脈圧は31mmHgまで著明に改善し, 6.2万×10E10/lまで減少していた血小板数は20万台に上昇した. 以後も呼吸不全の再燃やその他の副作用の発生を認めず, 1クールの内服継続が可能であった. Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)は, 胃癌などに関連して末梢肺動脈に微小な腫瘍塞栓,線維性の内膜肥厚をきたし, 急速な呼吸不全が進行する予後不良の病態である. 本症例では, S-1内服開始後より肺高血圧の著明な改善や血小板数の上昇が認められ, 胃癌に伴ったPTTMやDICの病態がS-1内服で改善したと考えられた. 原因不明の肺高血圧, 呼吸不全を認める患者においては, PTTMの可能性を念頭において悪性腫瘍の精査を行う必要があると考えられた.
索引用語 胃癌, PTTM