セッション情報 一般演題

タイトル O-42:

多発肝転移に対する肝動脈塞栓術が有効であった悪性インスリノーマの一例

演者 室 信一郎(岡山大学病院 消化器内科)
共同演者 那須 淳一郎(岡山大学病院 消化器内科), 松原 稔(岡山大学病院 消化器内科), 原田 亮(岡山大学病院 消化器内科), 加藤 博也(岡山大学病院 消化器内科), 岡田 裕之(岡山大学病院 光学診療部), 山本 和秀(岡山大学病院 消化器内科)
抄録 【症例】40歳代 女性【現病歴】2012年1月より一過性の意識混濁や冷汗と左季肋部痛を認め、3月中旬に近医を受診。造影CT、PET-CTで多発する肝腫瘍、膵腫瘍を指摘された。同年4月に意識消失あり前医に緊急入院したところ、血糖値が20mg/dl台であった。食事中や糖液の補液中にも頻回に低血糖発作を認め、精査加療のため当院に紹介となった。入院時の血液検査にて血糖値は54mg/dlと低値であり、IRIは67.5μU/ml、血中C-peptideは6.3ng/ml、NSEが169.9ng/mlと高値であった。腹部造影CT検査で膵体部に造影効果が乏しい、2.7cmの境界不明瞭な腫瘤があり、尾側の主膵管の拡張を認め、門脈浸潤と膵体部頭側にリンパ節腫大も認めた。また肝内には早期相でリング状濃染、後期相にてwash outを認めるSOLが多発しており多血性腫瘍の転移が疑われた。肝左葉のSOLと膵腫瘍からEUS-FNAを施行し、組織所見は、壊死を伴い、クロマチンが濃縮した類円形の偏在核と好酸球性胞体を有する異型細胞であり、免疫染色でクロモグラニンA、シナプトフィジン、CD56が陽性、インスリン染色は陰性、Ki-67指数は27%でありWHO分類でGrade3の膵原発のneuroendocrine carcinoma(NEC)、small cell typeと診断した。本症例では血流豊富な肝転移巣に対しEmbozeneを用いて2回に分けてTAEを行ったところ、CA19-9、NSE、IRI、C-peptideは低下し、血糖値も上昇し、低血糖発作は起きなくなった。治療終了2週間後のCT検査では肝転移巣の縮小を認めた。その後Etoposide+Cisplatin療法(Etoposide 100mg/m2、day1-3;Cisplatin 80mg/m2、day1、1コース3または4週)を開始したが、病勢のコントロールは困難であった。全身状態は次第に悪化し、緩和医療主体となり、当院1回目の入院から第157病日に原病死された。【結語】悪性インスリノーマの肝転移、難治性の低血糖発作に対してTAEが有効であった一例を報告した。ただ、原疾患に有効な化学療法が確立されておらず、症例の集積が必要と考える。
索引用語 悪性インスリノーマ, TAE