セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR-14:

IPMCとの鑑別に苦慮した膵粘液癌の一例

演者 西田 賢司(JA尾道総合病院)
共同演者
抄録 【症例】79歳、女性【主訴】膵精査【既往歴】急性膵炎【生活歴】喫煙:なし、アルコール:なし【現病歴】平成23年4月、検診目的にて近医を受診し、血液検査でCEAが74、CA19-9が314と高値を認め、腹部CTにて膵内石灰化および主膵管拡張を認めたため、精査目的に当院紹介となった。腫瘍マーカーの再検では、CEAが88.1U/ml、CA19-9が938.6U/mlとさらに上昇していた。腹部CTでは体部に高度な主膵管拡張および体部の小石灰化影を認め、造影では脾静脈浸潤が疑われた。造影MRIでは拡張膵管内の壁に隔壁状、網状の構造がみられ、主膵管壁のびまん性の増強効果を認めた。膵頭鉤部には、DW1で内腔に突出する腫瘍性病変を認めた。EUSでは拡張した主膵管内に充実性の腫瘍性病変を認め、膵実質との境界は明瞭であったが脾動静脈浸潤が疑われた。上腸間膜動脈及び門脈への浸潤は否定的であった。ERCPでは乳頭は開大し、膵管造影を試みたが粘液のため体尾部膵管は造影されなかった。採取した膵液は非常に粘調で、膵液細胞診の結果は陽性(腺癌)であった。粘液産生が強く、画像所見からも膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)が疑われたため、開腹による膵全摘術および門脈脾臓合併切除を行った。術後病理では腫瘍は膵尾部から膵頭部に向かって粘液貯留を形成して浸潤性に増殖し、部分的に石灰化を伴っていた。間質は豊富な線維膠原性組織の増成を認めた。部分的には腫瘍細胞は乳頭腺管構造を示して増殖する高分化型管状腺癌の像を示し、また低分化型腺癌の像を呈する部位も混在していた。免疫組織化学染色では、大半はMUC-1陰性、MUC-2陽性、MUC-5AC陽性、MUC-6陽性であったが、部位により染色態度への違いがみられた。腫瘍の大部分は粘液貯留を形成した腫瘍細胞の浸潤から成り、膵粘液癌と診断した。術後5か月の腹部MRIで肝への微小多発転移を認め、術後8か月に癌による全身状態の悪化が徐々に進行し死亡した。【考察】今回稀な膵粘液癌の1例を経験したため、若干の文献的考察を交えて報告する。
索引用語 膵粘液癌, MUC染色