セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR-13:

敗血症により死亡し、NASHと判明した一剖検例

演者 大村 祐乃(県立広島病院 消化器内科)
共同演者 北本 幹也(県立広島病院 消化器内科), 朴 範子(県立広島病院 救急科), 鈴木 慶(県立広島病院 救急科), 佐伯 辰彦(県立広島病院 救急科), 多田 昌弘(県立広島病院 救急科), 楠 真二(県立広島病院 救急科), 山野上 敬夫(県立広島病院 救急科), 西阪 隆(県立広島病院 臨床研究検査科)
抄録 症例は50歳代女性。既往歴は特記事項なく、糖尿病や脂質代謝異常を指摘されたことはない。飲酒歴、喫煙歴なし。35歳頃のBMIは25.6であったが、X-5年頃から自宅にひきこもり、更に肥満となっていた。X年8月に自宅で転倒してからは寝たきりであった。X年12月意識障害のため家族が救急要請し、当院に搬送となった。入院時ショック状態であり、意識レベルはJCS200、BMI 48.5、皮膚黄染、腹部膨隆、両下腿浮腫を認めていた。画像検査では多量の腹水、肝硬変像を認めた。肝機能に関しては、腹水は中等度以上、総ビリルビン 9.3 mg/dl、アルブミン 1.7 g/dl、PT活性度17.8%でありChild-Pugh分類 GradeCであった。体温は38℃と発熱があり、炎症反応が上昇していることなどから、感染巣は特定されなかったが敗血症を来しているものと考えられた。ショック状態であり挿管、人工呼吸管理、大量輸液、循環作動薬投与による全身管理を開始した。抗生剤や抗真菌薬の投与、分岐鎖アミノ酸製剤やアルブミン補充などを行い、腎不全に対してCHDFを導入した。一時抜管し意思疎通ができるまで状態は改善したものの、その後徐々に増悪し第43病日永眠された。肝疾患のetiologyとして、HBs抗原陰性、HBs抗体陽性、HBc抗体4.2と低力価陽性であり、HBVは既感染パターンと判断した。HCV抗体は陰性であった。IgG2380mg/dlと高値であったが、抗核抗体40未満であり、自己免疫性肝炎は否定的であった。剖検の結果、肝機能不全による出血傾向、易感染性、低アルブミン血症など種々の病態が加味されて多臓器不全につながった可能性が示唆された。肝組織は、NASHとして妥当像であった。本症例では、入院時のHbA1c(JDS) 3.1%であり肝機能障害による低下の可能性もあるが糖尿病とは考えにくく、高脂血症の指摘もなかったものの、高度の肥満の持続から肝硬変へ移行したのではないかと考えられた。
索引用語 NASH, 肝硬変