セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR-09:

経過観察し得た肝炎症性偽腫瘍の一例

演者 田村 悠希(川崎医科大学 総合内科2)
共同演者 西野 謙(川崎医科大学 総合内科2), 岡 好仁(川崎医科大学 総合内科2), 浦田 矩代(川崎医科大学 総合内科2), 中村 純(川崎医科大学 総合内科2), 後藤 大輔(川崎医科大学 総合内科2), 末廣 満彦(川崎医科大学 総合内科2), 川中 美和(川崎医科大学 総合内科2), 河本 博文(川崎医科大学 総合内科2)
抄録 症例は80歳男性。67歳時に横行結腸癌の手術、69歳時に胃癌の手術、75歳時に肺異型腺腫様過形成の胸腔鏡下手術を行い、経過観察中であった。2011年1月に行った胸腹部CTでは異常を指摘されなかったが、2012年1月に行った胸腹部CTにて肝右葉の後区域に4cm大の腫瘍性病変が観察されたため、当科紹介となった。特に自覚症状は有さなかったが、紹介時の血液生化学所見でCRP 2.5mg/dlと軽度の炎症所見を認めた。ほか、各種腫瘍マーカーや肝・胆道系酵素は正常範囲であり、HCVウイルス感染やHBVウイルス感染は、既往感染も含め否定的であった。
腹部造影CTでは、腫瘍の辺縁部が早期相から後期相にかけて遷延性に増強され、腫瘍内部は不均一な低信号を呈していた。腹部造影MRIでもほぼ同様の像であり、FDG-PET CTでは腫瘍に一致してFDG集積亢進を伴っていた。肝腫瘍以外の部分には、有意なFDG集積亢進は認めず、上下部内視鏡検査でも明らかな異常を認めなかった。以上の所見より胆管細胞癌を疑ったが、腹部造影超音波検査では早期相で点状の高エコーが散見され、胆管細胞癌の所見としてはやや非典型的であった。このため、狙撃生検を行ったところ、sclerosing typeの炎症性偽腫瘍と診断された。その後は経過観察を行い、腫瘍は徐々に縮小している。
自験例では、CT・MRI・FDG-PET CTでは胆管細胞癌が疑われていたが、造影超音波検査でやや非典型的な所見を認めたため、生検を行い診断に至った。手術適応の胆管細胞癌では、生検は禁忌とする意見もあるが、鑑別疾患として自験例のように経過観察可能な疾患も含まれているため、少しでも非典型的な所見を有する場合は、生検による診断が必要と考えられた。
索引用語 炎症性偽腫瘍, 診断