セッション情報 一般演題

タイトル O-32:

肝機能異常で発見され急速に進行した肝血管肉腫の一例

演者 和田 望(岡山大学病院消化器内科)
共同演者 能祖 一裕(岡山大学病院消化器内科), 森元 裕貴(岡山大学病院消化器内科), 竹内 康人(岡山大学病院消化器内科), 萩原 宏明(岡山大学病院消化器内科), 桑木 健志(岡山大学病院消化器内科), 大西 秀樹(岡山大学病院消化器内科), 中村 進一郎(岡山大学病院消化器内科), 白羽 英則(岡山大学病院消化器内科), 山本 和秀(岡山大学病院消化器内科)
抄録 症例は43歳の男性。元々、毎年健康診断を受けていたが特に異常を指摘されたことはなかった。2012年7月の健康診断で肝機能障害を指摘された。また、以前より右季肋部痛を自覚しており、近医を受診し精査を行ったところUS・CTなどで肝臓と脾臓に多発腫瘤を認めたため精査目的で同年8月に当院入院となった。入院時微熱を認める以外は身体所見に特に異常はみられず、血液検査では炎症反応の上昇・肝機能異常を認めたが腫瘍マーカーは全て陰性であった。腹部CTでは肝臓・脾臓に多発する低吸収域を認め、dynamic studyでは造影効果はみられなかった。EOB-MRIでは腫瘤はT1で低信号像、T2で高信号像を呈し、肝細胞相で低信号像であった。また、PET-CTでは肝臓・脾臓に高集積像が散見された。以上より肝血管肉腫や肝類上皮血管内皮腫などを疑ったが確定診断には至らず、2度にわたり肝生検を施行したが組織診断はつかず、外科的に脾臓摘出の方針となり一旦退院となった。しかし、同年9月末に腫瘍からの出血のため緊急入院となり、肝動脈塞栓術(TAE)を施行し緊急入院となった。途中CDDPの肝動注も試みたが効果はなく、出血を繰り返し全身状態は徐々に不良となっていき、2013年2月1日に永眠された。家族の同意を得て剖検を行ったところ肝血管肉腫の診断であった。肝血管肉腫は肝原発悪性腫瘍の中でも稀な疾患であり、肝原発悪性腫瘍の約0.26~1.8%との報告がある。予後は極めて不良であり、また本症例のように生前は診断困難であり剖検にて診断に至った症例も多い。本症例では腫瘤の中心部は出血に伴う凝血塊や壊死組織が大半であり、腫瘍の辺縁部のみに充実成分が局在しており、通常の肝生検では診断困難であった。今回我々は診断に苦慮し急速に進行した肝血管肉腫の一例を経験したため、若干の文献的考察を含め報告する。
索引用語 肝血管肉腫, CDDP