抄録 |
MEN1型に合併した肝転移を伴った膵神経内分泌腫瘍の1例独立行政法人国立病院機構 福山医療センター松枝克典、豊川達也、表 静馬、岡本明子、宮阪梨華、渡邊一雄、藤田勲生、村上敬子、金吉 俊彦、坂田 達朗、北田 浩二、稲垣 優、友田 純 症例は57歳女性。主訴は肝占拠性病変(SOL)。平成24年2月、近医でスクリーニング目的に腹部および頚部超音波検査を施行され肝SOL、左副甲状腺腫、また血液検査上、高Ca血症、intact PTHの上昇を指摘され、3月当院甲状腺外科に紹介された。既往歴に平成8年に高PRL性下垂体腺腫に対して手術歴あり。またMEN1型と診断されている。家族歴に姉の甲状腺手術、GH高値、また長男、次男に下垂体腺腫、次女に膵腫瘍がある。入院時の血液検査ではCa 11.5mg/dl、PTH 139pg/ml、カルシトニン4pg/dl、ガストリン55pg/ml、インスリン15.3μU/ml、5-HIAA 5.9μg/mlであった。造影CTでは、膵尾部に5mm大の濃染する高吸収病変と肝右葉に19mm大の低吸収 SOLを認めた。超音波ガイド下に肝生検を行ったところ膵島腫瘍の肝転移が疑われる所見であった。上記から非機能性膵内分泌腫瘍とその肝転移と診断し、リンパ節郭清を伴う膵尾部切除術、肝右葉切除術を施行した。病理組織学的には、膵の結節病変は、異型上皮様細胞のリボン状~索状パターンをとり、一見いわゆるcarcinoidの像で、肝臓の結節も同様であった。また、免疫組織学的には、Chromogranin A、CD56陽性、Synaptophysin 、p53陰性、Ki67については、膵も肝も極々少数(+)で、増殖活性は低いという結果で、神経内分泌腫瘍(NET:Neuroendocrine tumor)G1(Grade1)と診断した(2010年のWHO分類)。 また、腫瘍細胞は両者ともgastrin、insulin陰性だったが、膵腫瘍はglucagon陽性、肝腫瘍は陰性であった。CTなどの画像診断で偶然見つかるNETが最近では増加している。非症候性NETは緩徐に増大する例が多いが、急速に肝転移をきたす例もある。今回、MEN1型に非症候性NETを合併し、さらに肝転移を生じた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 |