セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR-06:

十二指腸出血を伴う多発腹部内臓仮性動脈瘤破裂に対しコイル塞栓術により治療した一例

演者 岡 好仁(川崎医科大学 総合内科学2(消化器))
共同演者 浦田 矩代(川崎医科大学 総合内科学2(消化器)), 中村 純(川崎医科大学 総合内科学2(消化器)), 後藤 大輔(川崎医科大学 総合内科学2(消化器)), 西野 謙(川崎医科大学 総合内科学2(消化器)), 末廣 満彦(川崎医科大学 総合内科学2(消化器)), 川中 美和(川崎医科大学 総合内科学2(消化器)), 河本 博文(川崎医科大学 総合内科学2(消化器))
抄録 【症例】70歳代、女性。慢性腎不全で維持透析中、DeBakey IIIb型、偽腔開存型の大動脈解離の既往があり、解離により腹腔動脈根部は閉塞、上腸間膜動脈内腔は真腔、偽腔の両方で還流されていた。2012年10月中旬から腹部不快感が出現、その後急激な貧血の進行を認め近医入院精査したが出血源不明であり、保存的加療にて軽快した。12月中旬に再度下血が出現し近医受診、上部消化管内視鏡検査で十二指腸内に穿破した粘膜下血腫を認め精査加療目的に当院紹介となった。来院時の腹部造影CTで固有肝動脈分岐部、十二指腸下行脚内側、十二指腸水平脚近傍に動脈瘤を認め、さらに後2者は周囲に血腫を伴っていたことより、いずれかが十二指腸内に穿破したと考え腹部血管造影を施行した。後下膵十二指腸動脈から後上膵十二指腸動脈に連続する部分の分枝と、上腸間膜動脈から分岐して十二指腸水平脚領域に分布する血管、そして固有肝動脈分岐部の3か所に仮性動脈瘤を認めた。前者の仮性動脈瘤がサイズ的に大きく責任病変と考えコイル塞栓術を施行した。残りの2か所は動脈が脆弱であることと多数の塞栓による血流障害に伴う偶発症を危惧し後日施行することとした。翌日透析後に再度下血、血圧低下を認め、緊急血管造影を施行したところ、上腸間膜動脈から十二指腸水平脚領域に分岐する血管上の仮性動脈瘤から十二指腸への造影剤の漏出を認め、同部位に対し再度コイル塞栓術を施行した。後日施行した上部消化管内視鏡検査では、前医で認めた粘膜下血腫は水平脚前壁の2回目に塞栓術を行った領域に一致していた。また、最初に塞栓術を行った下行脚領域は壁外圧迫のみであった。後日、固有肝動脈分岐部の仮性動脈瘤を塞栓し退院とした。【結語】腹部内臓動脈瘤は人口の約1%に認めるが、消化管出血を契機に発見される例は稀である。複数の動脈瘤が存在する場合、可能な限り内視鏡による出血部位の正確な同定が効率的な塞栓術を行う上で必要であると考えられた。
索引用語 腹部内臓仮性動脈瘤, 十二指腸出血