セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR07:

膵嚢胞性腫瘍で鑑別を要した膵頭部神経鞘腫の1例

演者 田中 秀典(広島市立安佐市民病院 内視鏡内科)
共同演者 桑原 健一(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 妹尾 慧(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 頼田 尚樹(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 齊藤 裕平(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 平野 大樹(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 高田 俊介(広島市立安佐市民病院 内視鏡内科), 上田 裕之(広島市立安佐市民病院 内視鏡内科), 脇 浩司(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 木村 茂(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 永田 信二(広島市立安佐市民病院 内視鏡内科), 辻 恵二(広島市立安佐市民病院 消化器内科), 金子 真弓(広島市立安佐市民病院 臨床検査部)
抄録 膵嚢胞性腫瘍では,漿液性嚢胞腫瘍(SCN),粘液性嚢胞腫瘍(MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の鑑別が特に問題となる.今回我々は,膵嚢胞性腫瘍でこれらと鑑別を要し,病理組織から神経鞘腫と診断した1例を経験したので報告する.症例は70歳代女性.腹痛を主訴に近医受診し,腹部超音波検査にて膵頭部に嚢胞性病変を指摘されたため精査目的に当院紹介受診された.腹部超音波検査では膵頭部に25mm大の境界明瞭な嚢胞性腫瘍を認め,内部は隔壁を伴い多房性であった.造影CTでは,同病変は辺縁平滑で境界明瞭に描出され,内部には造影早期より濃染される部分を認めた.MRCPでは,同病変はT1で全体的に低信号,T2では造影CTにて濃染されない部分に一致して高信号を示した.EUSでは,同病変は内部に大小不同の嚢胞を有し,充実様部分の混在を認めた.ERCPでは,主膵管と病変との交通は無く,主膵管の拡張や圧排像なども認めなかった.以上の所見からSCNを第一に考え,外来にて経過観察を行っていたが,1年後のCTにて同病変は軽度増大傾向を認め,PET-CTにてもFDGの異常集積を認めた.再度ERCP施行し,膵液細胞診にても悪性所見を認めなかったが,経過からも悪性病変の可能性を否定できなかったため幽門輪温存膵頭十二指腸切除術により腫瘍摘出を行った.病理組織では異型の乏しい紡錘形細胞の増殖と一部で柵状配列を認め,免疫染色にてS-100にびまん性に強陽性を示したため神経鞘腫と診断された.非腫瘍部膵組織や十二指腸およびリンパ節には悪性所見を認めなかった.神経鞘腫は中枢神経,脊髄,縦隔,四肢などに比較的好発し,消化器における発生は稀とされている.膵原発の神経鞘腫の報告は本邦でも極めて少なく,術前に診断された例はない.本症例も同様であり,診断に苦慮し膵嚢胞性腫瘍と鑑別を要した1例を報告する.
索引用語 神経鞘腫, 膵嚢胞性腫瘍