セッション情報 一般演題

タイトル 46:

1ヶ月間に経験した虚血性大腸炎10症例の臨床的検討

演者 丸山 茂雄(丸山内科クリニック)
共同演者 池淵 雄一郎(鳥取大学医学部機能病態内科学), 八島 一夫(鳥取大学医学部機能病態内科学), 孝田 雅彦(鳥取大学医学部機能病態内科学), 村脇 義和(鳥取大学医学部機能病態内科学)
抄録 【はじめに】虚血性大腸炎(IC)は日常遭遇する疾患であるが、短期間に集中発生する事は比較的稀と思われる。今回我々は1ヶ月という短期間に10例のICを経験した。臨床的特徴及び背景因子を検討し、発症要因に関して考察を行った。
【対象】平成25年5月15日より1ヶ月間に、当院にてICと診断した10症例を対象とし、臨床検査及びアンケート調査を行った。ICの診断は臨床症状、内視鏡所見、組織学的所見を総合して行った。
【結果】年齢は40-74歳、平均年齢は56歳、10例全て女性であった。罹患部位は6例が下行結腸、4例が横行-下行結腸であった。全例が腹痛で発症し、直後に下痢・血便を認めた。6例に基礎疾患として高血圧、高脂血症等を認め、1例にB型肝硬変を認めた。1例は過多月経にて黄体・卵胞ホルモン配合剤を内服していた。便培養検査は全例陰性で感染性大腸炎は否定的と考えた。CRPは全例陰性で、白血球は重症例で高い傾向を示した。1例は入院加療を行い、9例は外来点滴加療で治癒した。アンケート調査結果より、全例夕食摂取後の比較的短時間(平均2時間後)で発症していた。発症前に4例が便秘、2例が硬便、1例は発症日のみ便秘であった。抗生剤使用歴・飲酒歴・喫煙歴は認めなかった。BMI:25以上の2例は、重症なICであった。発症時期の湿度は比較的高い傾向を認めた。
【考察】ICの成因として脈管側因子と腸管側因子の2つが考えられている。今回、全例夕食後短時間で発症しており、食後の胃結腸反射により腸管運動亢進、腸管内圧上昇、腸管血流低下が発生し、ICを誘発した可能性が考えられ、腸管側因子の関与が強く示唆された。症例3では、黄体・卵胞ホルモン配合剤によるICの可能性も考えられた。症例6では肝硬変による鬱血、凝固線溶障害も発症に関与した可能性がある。本症例が比較的短期間に集中発生している事から、IC発生機序に結びつく要因を検討したが、原因究明につながる事実は見出されなかった。しかし、ICも消化性潰瘍のように好発時期がある可能性は否定出来ず、今後症例を増やして検討する必要があると考えた。
索引用語 虚血性大腸炎, 臨床的検討