セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR14:

難治性下痢で発症したEnterocolic Lymphocytic Phlebitis(ELP)の1例

演者 國原 紗代子(県立広島病院 内視鏡内科)
共同演者 渡邉 千之(県立広島病院 消化器内科), 大村 祐乃(県立広島病院 消化器内科), 吹上 綾美(県立広島病院 内視鏡内科), 大谷 一郎(県立広島病院 消化器内科), 東條 加奈(県立広島病院 内視鏡内科), 小道 大輔(県立広島病院 消化器内科), 桑田 幸央(県立広島病院 消化器内科), 平本 智樹(県立広島病院 内視鏡内科), 平賀 裕子(県立広島病院 内視鏡内科), 北本 幹也(県立広島病院 消化器内科), 山田 博康(県立広島病院 消化器内科), 隅岡 正昭(県立広島病院 内視鏡内科)
抄録 症例は50歳代、男性。20XX年3月頃より1日10回/日の下痢、腹痛を認め、近医を受診した。大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎と診断され内服加療されていたが、症状の増悪を認め、20XX+1年2月当院に紹介入院となった。入院後の大腸内視鏡検査では、下行結腸から連続する粘膜浮腫と直腸に浅い潰瘍を認めた。CTでは、左側結腸の著明な壁肥厚と腸管粘膜の虚血、腸管周囲血管の増生を認めた。潰瘍性大腸炎の内視鏡像として非典型的ではあったが、PSL50mg、LCAPにて加療を開始した。治療効果が得られず、下痢、腹痛がさらに増強したため、症状改善目的で回腸ストマを造設したが、空置大腸から下痢が持続した。入院第50病日に再度施行した大腸内視鏡検査では、前回所見に加えてS状結腸に広汎な潰瘍形成を認めた。治療抵抗のため、原因不明の腸管虚血による大腸炎として、4月に左半結腸切除術を施行した。切除病理標本では、粘膜下層から漿膜下の細・小静脈の炎症とフィブリノイド壊死、内腔閉塞を認めたが、動脈周囲には炎症所見は指摘されなかった。以上の所見より、Enterocolic Lymphocystic Phlebitis(ELP)と診断された。【考察】ELPは稀な疾患で、腸管壁内の細・小静脈から腸間膜の大静脈まですべての大きさの静脈に静脈炎を来し、血栓形成による腸管壊死を認めることもある。血液検査や内視鏡所見には典型的なものはなく、診断は手術による病理所見によることが多い。今回、慢性の難治性下痢で発症し、診断に難渋したELPの一例を経験したので文献的考察を含め報告する。
索引用語 Enterocolic Lymphocytic Phlebitis, 静脈炎