セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル JR18:

悪性リンパ腫治療後にHBV再活性化を来したHBs抗原自然消失例

演者 竹内 泰江(広島大学病院 消化器・代謝内科)
共同演者 柘植 雅貴(広島大学病院 消化器・代謝内科), 村上 英介(広島大学病院 消化器・代謝内科), 藤野 初江(広島大学病院 消化器・代謝内科), 菅 宏美(広島大学病院 消化器・代謝内科), 小林 知樹(広島大学病院 消化器・代謝内科), 福原 崇之(広島大学病院 消化器・代謝内科), 本田 洋士(広島大学病院 消化器・代謝内科), 苗代 典昭(広島大学病院 消化器・代謝内科), 宮木 大輔(広島大学病院 消化器・代謝内科), 河岡 友和(広島大学病院 消化器・代謝内科), 平松 憲(広島大学病院 消化器・代謝内科), 今村 道雄(広島大学病院 消化器・代謝内科), 川上 由育(広島大学病院 消化器・代謝内科), 兵庫 秀幸(広島大学病院 消化器・代謝内科), 相方 浩(広島大学病院 消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学病院 消化器・代謝内科)
抄録 【症例】69歳、男性【主訴】全身倦怠感【現病歴】42歳時にHBsAg陽性を指摘されるも放置。56歳時、再びHBsAg陽性を指摘され、以後3年間近医にて経過観察されていたが、HBsAg陰性化していたため、経過観察終了となっていた。2010年10月、左オトガイ下リンパ節の腫脹を主訴に近医受診。悪性リンパ腫と診断され、当院血液内科にて2011年2月より、R-CHOP療法を開始された。この際、HBsAg、HBsAbはいずれも陰性であったことから、HBV関連マーカーの測定は行われなかった。R-CHOP6クール施行後、悪性リンパ腫はCRとなったが、2011年7月(治療終了1か月後)より、全身倦怠感、肝機能障害出現。HBsAgは陽転し(4.72 Log IU/ml)、HBV DNAも6.6 LGE/mlと高値であったことから、HBV再活性化と診断し、当科入院となった。【臨床経過】入院時、明らかな肝性脳症は認められなかったものの、AST/ALTが1077 IU/L /1408 IU/Lと著明に上昇しており、PT活性も67%と低下していたことから、HBV再活性化による劇症肝炎への移行が懸念された。直ちにエンテカビルの内服を開始するとともに、3日間のステロイドパルス療法を施行した。その後も、プレドニソロンとエンテカビルの内服を継続し、経過観察を行ったところ、肝機能障害は遷延したものの、治療開始7日目よりPT活性の回復を認め、2か月後にはALTも正常化した。HBV治療開始6か月目より、リツキシマブ単剤による維持療法を再開しているが、エンテカビルの継続内服にて、HBV DNAは持続陰性化し、HBsAg価も低下しており(1.54 Log IU/ml)、経過良好である。【考察および結語】本症例は、悪性リンパ腫治療後にHBVの再活性化を来したHBs抗原自然消失例の一例である。一般にHBVキャリアにおけるHBs抗原消失率は年率約1%と低値であるが、抗原価は年齢とともに低下することが知られている。悪性リンパ腫の好発年齢は60歳代であり、HBVキャリアの中にはHBs抗原消失後に悪性リンパ腫を発症し、キャリアもしくは既往感染者と判断されずに化学療法を施行されている可能性があり、示唆に富む症例と考えられたので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 B型肝炎, 再活性化