セッション情報 中国支部専修医奨励賞(卒後3-5年迄)

タイトル SR05:

Ezetimibeによる胆汁酸代謝への影響:発癌促進性胆汁酸に対するパイロット研究

演者 小林 知貴(広島大学病院 総合内科・総合診療科)
共同演者 岸川 暢介(広島大学病院 総合内科・総合診療科), 菅野 啓司(広島大学病院 総合内科・総合診療科), 田妻 進(広島大学病院 総合内科・総合診療科)
抄録 【目的】胆石形成に肥満や脂質異常症が寄与していることから、胆石症は生活習慣病の側面をもつ。これまで当教室ではコレステロール吸収阻害薬Ezetimibeが胆汁脂質に与える影響について催石性に注目し検討してきた。コレステロール代謝産物である胆汁酸のなかでも二次胆汁酸は肝臓癌や大腸癌などの発症・進展に関与することが解明されつつある。今回、Ezetimibeが胆汁酸代謝に与える影響について検討した。【方法】本研究の趣旨を理解し同意を得られた脂質異常症を伴う胆石症患者を対象に、Ezetimibeの投与前と投与開始3ヶ月後に経鼻内視鏡を用い十二指腸胆汁を回収し、胆汁脂質組成、胆汁酸成分を解析した。【成績】解析を行った12例は、平均BMI 24.6 kg/m2、胆嚢温存例は9例、胆嚢摘出術後例は3例であった。9例がウルソデオキシコール酸(UDCA)を服用、うち2例は他の脂質改善薬を併用していた。Ezetimibe投与後、血清脂質ではT-chol、LDL-C、カンペステロール(吸収マーカー)は著明に減少し、ラソステロール(合成マーカー)は上昇する傾向にあった。胆汁脂質解析では、UDCA非投与群で催石指数が著明に改善した。胆汁酸分画の解析ではUDCAやケノデオキシコール酸(CDCA)に変化は見られなかったが、分析可能であった例では一次胆汁酸であるコール酸(CA)がわずかながら増加する傾向にあり、二次胆汁酸であるデオキシコール酸 (DCA))やリトコール酸(LCA)は減少する傾向にあった。【結論】今回の検討では症例によりばらつきがあるもののEzetimibeの投与で一次胆汁酸の増加と二次胆汁酸の低下傾向を認めた。これはコレステロール吸収が抑制された結果、代償的に肝臓での合成が進み、これに伴い胆汁酸への異化が亢進することで一次胆汁酸分画が増加した可能性が考えられた。コレステロール代謝は胆汁酸代謝と密接に関連しており、二次胆汁酸による発癌病態生理の視点から、今後も症例の収集と解析を行いたい。
索引用語 Ezerimibe, 胆汁酸