セッション情報 中国支部研修医奨励賞(卒後2年目迄)

タイトル 34:

タクロリムス投与により手術を回避し得た難治性潰瘍性大腸炎3例の検討

演者 林 真希(総合病院 山口赤十字病院)
共同演者 平野 敦士(総合病院 山口赤十字病院), 河野 真一(総合病院 山口赤十字病院), 末兼 浩史(総合病院 山口赤十字病院)
抄録 【背景】近年難治性潰瘍性大腸炎に対してタクロリムスや抗TNFα製剤が保険適応となり、手術を回避できる症例が増加している。我々はタクロリムス投与により手術を回避し得た難治性潰瘍性大腸炎を3例経験したので報告する。【症例1】26歳男性。平成25年2月に全大腸炎型潰瘍性大腸炎を発症。プレドニン(PSL) 50mg/日、メサラジン3600mg/日とGCAP併用するも改善に乏しくステロイド抵抗性と考えられたためタクロリムスの投与を開始した。投与開始直前のDAI スコアは11点であったが、投与後早期より改善傾向みられ、4週投与後にはDAIスコア3点まで改善した。【症例2】15歳女性。平成25年5月に全大腸炎型潰瘍性大腸炎を発症。PSL50mg/日、メサラジン4000mg/日で治療開始し、経過中にステロイド注腸やGCAPを併用したが内視鏡所見の増悪を認めたため、ステロイド抵抗性と判断しタクロリムスを導入した。投与開始直前のDAI スコアは8点であったが、投与後速やかに改善みられ、2週投与後にはDAIスコア3点まで改善した。【症例3】28歳女性。平成13年に左側大腸炎型の潰瘍性大腸炎を発症。初発時はメサラジンとPSL投与で寛解状態となったが、以後PSL減量に伴い再燃を繰り返すためアザチオプリンを併用されていた。今回平成25年6月にPSL 5mg/日まで減量した後に再燃がみられた。他院にてPSL 40mg/日、メサラジン3600mg/日、アザチオプリン50mg/日で治療されていたが改善みられず当院紹介となった。当院入院後、ステロイド依存性と判断しタクロリムスを導入した。投与開始直前のDAI スコアは11点であったが、投与後速やかに改善みられ、2週投与後にはDAIスコア5点まで改善した。【考察】いずれの症例においてもタクロリムスは4mg/日から開始し、導入最初の2週間はトラフ値で10-15ng/dlを目標に増量した。各症例とも投与開始後、数日間は目標トラフ値には到達しなかったにもかかわらず、症状、炎症所見とも速やかに改善したため手術を回避することができた。タクロリムスは非常に即効性が高く、導入早期に手術が回避可能かどうか判断することが可能と考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス