セッション情報 一般演題

タイトル 41:

肛門周囲にPagetoid spreadを呈した直腸中分化型腺癌の一例

演者 増原 昌明(新南陽市民病院 内科)
共同演者 在津 潤一(新南陽市民病院 内科), 橋本 毅一郎(新南陽市民病院 外科), 鈴木 道成(新南陽市民病院 外科), 河野 裕夫(山口大学 医学部 大学院 病理形態学)
抄録 【はじめに】乳癌が乳頭・乳輪の表皮内に進展した状態はPaget病であり,Paget病と類似した像を乳房外の部位に生じるものが乳房外Paget病である.さらに皮膚に隣接する臓器の上皮性悪性腫瘍細胞が,上皮内,上皮下を移動し,Paget細胞様の病理像を呈して表皮へ到達し,表皮内癌の所見を呈するまれな病態がPagetoid spreadである. 【症例】89歳男性.近医で貧血と便潜血を指摘され,当科に紹介.視診で肛門周囲に白色調平坦隆起を認め,直腸診で,肛門縁にかかる位置で10時に母指頭大扁平腫瘤を触知した. Hgb 13.0g/dlと軽度低下あり,CEAが15.1ng/ml, CA19-9が165U/mlと上昇していた.全大腸内視鏡検査では,Rb,10時方向に中心に陥凹を伴う隆起性病変を認めた.陥凹部分は無構造,生検結果はadenocarcinomaであった.sm深部以深の浸潤を伴う直腸癌と診断した.また肛門周囲病変の生検は,乳房外Pget病であった. 造影MRIにて直腸,肛門部に,造影効果を認めたが,直腸壁外への浸潤は認めなかった.CT上,遠隔転移は認めなかった.直腸癌のpagetoid spreadが疑われた.腹会陰式直腸切除術,肛門周囲皮膚切離術を施行した.Rbに18mmx15mmの腫瘍を認め,病理組織学的検査では移行部においてcancer cellが浸潤し,上皮下内括約筋平滑筋層内にも浸潤し,肛門側では扁平上皮内でPagetoid spreadを認めた.Depth;pMP, int, IFNb, ly1,vo,pPM0, pDM0,pRM0.免疫染色でCK20(+),GCDFP-15(-)で,直腸癌のpagetoid spreadと診断した.【考察】乳房外Paget病の多くは表皮内癌で良好な予後が期待される一方,Pagetoid spreadは隣接臓器の浸潤癌が存在し,予後は良好とはいえない.直腸診施行時に,肛門周囲の皮膚所見にも注意が必要である.
索引用語 Pagetoid spread, 直腸癌