セッション情報 一般演題

タイトル 30:

下血を認めた回腸脂肪腫の一例

演者 檜垣 真吾(聖比留会セントヒル病院消化器内科)
共同演者 浜辺 崇衣(聖比留会セントヒル病院消化器内科), 松元 祐輔(聖比留会セントヒル病院消化器内科)
抄録 カプセル小腸内視鏡検査(CE)の普及によって、小腸悪性腫瘍だけでなく無症状の小腸良性腫瘍を発見する機会も増えた。今回、我々は、経過観察していた小腸粘膜下腫瘍が、突然下血し外科的腫瘍摘出となった一例を経験したので報告する。症例は、81歳男性で、脳梗塞後遺症、高血圧症、糖尿病、ASO、変形性脊椎症、慢性腎炎で加療中であった。エパデールSとプロレナールを内服していたが、バイアスピリン、パナルジンの内服は無かった。 CEA 8.9の上昇と便潜血陽性の精査で、大腸内視鏡検査、上部消化管内視鏡検査を行ったが異常がなく、CEを施行したところ、回腸に2cm大で、なだらかに立ち上がり発赤した粘膜に血管の透見できる腫瘍を認め小腸粘膜下腫瘍を診断した。この病変が明らかな便潜血陽性の原因とは考えにくく、小腸バリウムX線検査で腫瘍を同定できないことやFDG-PETで異常集積が認められないことから経過観察とした。6ヶ月後、便に血液が付着するのを本人が気付き、近医を受診したところ、Hb 6.4g/dlの貧血を認めたため再精査となった。CEでは、前回と同様に回腸に粘膜下腫瘍を認めたが、今回は腫瘍の表面に潰瘍があり、周囲の腸管内に血塊を認めた。胃、大腸に出血する病変がなく,この回腸腫瘍を出血の原因と考えて外科的に摘出した。DBEは施行しておらず、腫瘍の同定に困難が予想されたが、回腸の漿膜側に血管が密に集族した部位があり、硬い腫瘍を触知でき容易に同定された。摘出腫瘍は、13mmの径で成熟脂肪組織からなる脂肪腫で表面に潰瘍を形成していた。悪性所見は無かった。患者は、腫瘍摘出後は下血がなく良好に経過している。脂肪腫は有症状ならば治療の対象となるが、通常経過観察される。文献的にも今回のように出血や便潜血の原因となって治療した小腸脂肪腫の症例報告はまれであった。今回13mmと小腫瘍であったが下血の原因となっており、今後CEで発見される小腸の小さい腫瘍性病変も注意深い経過観察が必要と考えられた。
索引用語 小腸脂肪腫, カプセル内視鏡